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貸切バスの分割休息を詳しく解説します。(改善基準告示)

2019年01月09日05時17分

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

旅客運送業において、もっとも大切なことは無事に運行を終えることです。
そして、安全運行にとって最も大事なことは、乗務員が万全な体調で勤務できる環境を作ることです。
 

改善基準告示の基本の『き』

貸切バス乗務員の労働時間について、厚生労働省が出した『労働時間等の改善基準告示』という通達があります。
今回はその中でも誤解の多い、『分割休息』について基本的な考え方を再確認しましょう。
 

①休息期間は8時間以上
この点については議論がありません。
貸切バスであろうと、タクシーであろうと、トラックであろうと、休息期間は8時間以上です。
 
②拘束時間の基本は13時間以内、延長する場合でも16時間まで
この点についても、貸切バス、タクシー、トラックすべて共通です。
『1日は24時間』であり、『休息期間は最低8時間』なので、『拘束時間の最高は16時間』までになります。

 
基本はこれだけです。
ほとんどの問題点はこの原則が理解できていれば解決できます。
 

客待ちで4時間以上あいたら休息期間にできる?

勤務中に乗務員が休息期間に入れば、その部分は時間制運賃を加算する必要がなくなります。
休息期間に時間制運賃がかからないことを『中抜き』などと表現します。

休息期間に時間制運賃がかからないことはいわゆる『泊まり運行』で考えると明白です。
 
★月曜日 
午前8時実車~午後17時宿泊地到着
★火曜日
午前6時実車~午後18時到着解散
 
この場合、月曜日の17時から火曜日6時まで11時間が休息期間となっています。
この11時間に時間制運賃が必要ないことは誰が考えても分かります。

 
むずかしく考えることはありません。
この考え方を応用して、1日の運行の間に『休息期間』を作れれば、同じようにその部分には時間制運賃がかからないことになります。

では、どんな条件をクリアすれば、『休息期間』になるのでしょうか?
その答えは、改善基準告示の中に明記されています。

 

【関連記事】
貸切バス 運賃中抜きの条件をまとめてみます。(前編)

 

改善基準告示の明記する休息期間とは?

上記の質問の答えは貸切バスの分割休息という特例の中にあります。
 

業務の必要上、勤務の終了後継続した8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合には、当分の間、一定期間(原則として2週間から4週間程度)における全勤務回数の2分の1の回数を限度として、休息期間を拘束時間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることができます。この場合、分割された休息期間は、1日において1回当たり継続4時間以上、合計10時間以上でなければなりません。

 
この『4時間』という言葉が独り歩きしています。
分割休息のポイントは次の通りです。

①1回の休息は4時間以上
2時間や3時間では休息期間にすることができません。
 
②休息期間を分割して使うなら、1日の休息期間の合計は10時間以上
昼間に4時間の休息期間をとったのであれば、勤務後の休息期間は6時間以上確保する必要があります。
つまり、分割休息を選択した場合の拘束時間は、最大でも14時間に短縮されます。
 
③期間は基準日を起点に2週間から4週間
この決まりは、分割休息を連続して適用しないための予防線です。
この期間を定めなければ、『1月から6月は毎回分割休息、7月から12月は通常休息』などという使用を認めることとなって、乗務員の健康を守れないからです。

 

分割された4時間は自由時間?

休息期間は単なる自由時間ではありません。
厚生労働省が考える休息期間とは次のようなものです。
 

☑お風呂に入ることができる。
☑体を伸ばして休むことができる。
☑好きにタバコが吸える。

 
上の3点ができなければ休息期間ではない、とは言いませんが、これくらい自由な時間で初めて休息期間と呼べるのです。
例えば、以下のようなケースではいくら建前で休息期間と言っても認められません。

☑お客様がバスを自由に出入りする
この環境では休めません。
もしもお客様が話しかけてきた場合、無視することができますか?

☑添乗員の急な電話に対応する必要がある
『サラリーマンに休息はない。あるのは自宅待機だけ』
労働基準法が軽視されていた時代に、あたり前のように上司から言われたセリフです。
添乗員さんからの急な電話に対応しなければならないのであれば、自宅待機ならぬ、『車内待機』です。

 
分割休息の特例はあくまでも特例ですので、かなり使用が限定されます。
もともとこの特例の趣旨は、繁忙期に8時間以上のまとまった休息を確保できない場合に、やむおえず休息期間を分割するすることであることを忘れてはいけません。
 

どうすれば分割休息をうまく活用できる?

貸切バスやトラックで、お客様の観光時間待ちや荷物の積み込み待ちのことを、客待ち、荷待ちなどと表現します。
この時間は基本的に労働時間です。
つまり、運転していなくとも、業務に対応する必要がある時間は労働時間と考えるわけです。

では、せっかくの分割休息制度。
どうすれば、うまく利用できるでしょうか?

①4時間が最低時間
可能であれば、5時間は確保したいところです。
4時間ぎりぎりだと、いろいろ問題があります。

②車内以外の場所で休んでもらう
貸切バスの車内で、完全に体を伸ばして休む場所を探すのはむずかしいでしょう。
できれば、温泉施設などを会社負担で用意して、乗務員さんに利用してもらいましょう。
旅館業法における宿泊施設を会社が手配(予約)して、乗務員さんに利用してもらいましょう。(令和元年10月21日修正加筆)
 

 

③業務への復帰時間は明確に決める
たとえば、午後1時からお客様が観光地に入り、運転手さんは休息期間に入ったとします。
その際に業務復帰の時間を明確に午後5時なり午後6時と決めておくことが必要です。
なぜなら、いつ呼び出しがかかるかわからない状況は、休息期間とは呼べないからです。

④休息期間から復帰したときは中間点呼
特に明示されているわけではないですが、休息期間から復帰したときは電話で中間点呼を受けましょう。
その際、アルコールチェックも行っておくと万全です。

 

分割休息に関する社内規程と同意書を作成しましょう

分割休息を実施するためには、乗務員さんたちに一定の協力を求めなければなりません。
雇用側として従業者に協力を求めるのであれば、社内に規程が必要です。

前述した『分割休息の条件』を文書化したものを社内規程として残しましょう。
当社のサポート先のお客様には、テンプレートをお配りしております。
 
【関連記事】
貸切バスの分割休息に関する社内規則のテンプレート

 
社内規程と同時に、同意してくれた乗務員さんたちの同意書も保管しましょう。
この規程は乗務員さんの健康を守るためのものですから、同意に異論はないはずです。
同意書のテンプレートも同じサポート専用ページからダウンロードできます。
 

いざとなったら休息中止!

『お客様の体調が悪くなった』、『急な天候変化で予定が早まった』などのケースではどうすればいいのでしょうか?
その場合は、分割休息を中止にすればOKです。
すぐに業務に復帰することができます。
但し、休息期間ではなくなりましたので、休息開始の時点から時間制運賃は発生します。
 

下限割れには二種類ある!!

分割休息はあくまでも、業務上やむおえず、本来の時間に8時間以上の休息を与えられない場合の特例です。
会社の営業的な戦略で、この特例を乱用しないようにしてください。

また、分割休息でいわゆる『中抜き』をしている場合、最低運賃を割り込んでいる可能性も考えられますので、監査の際に厳しくみられる可能性があることも忘れないでください。
支局による一般監査は、あくまでも実態で評価しますので、書類上拘束を解いていても、実態上は勤務していると判断されることもあります。

下限割れには二種類あります。
どちらも60日車の違反ですが、その内容も根拠法令も全く違うところにあります。
詳しくは以下の記事をお読みください。
貸切バス 運賃料金の下限割れには二つの種類がある

 
【関連記事】
貸切バスのサポート先に監査が入った!
 

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】

 

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