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貸切バス・トラックの分割休息について詳しく解説します。(令和5年12月2日改訂版)

この記事を読むのに必要な時間は約 12 分です。

一般貸切旅客

バスやトラックの運送業において、もっとも大切なことは無事に運行を終えることです。
そして、安全運行にとって最も大事なことは、乗務員が万全な体調で勤務できる環境を作ることです。
 

バス・トラック運転者の改善基準告示の基本

貸切バス乗務員の労働時間について、厚生労働省が出した『労働時間等の改善基準告示』という通達があります。
今回はその中でも比較的誤解されることの多い、『分割休息』について基本的な考え方を再確認しましょう。

最初に確認するのは、通常の休息期間と拘束時間についてです。

バスやトラックドライバーの休息期間と拘束時間
✅休息期間について

この点については議論がありません。
貸切バスであろうと、トラックであろうと、休息期間は8時間以上です。
 
✅拘束時間の基本は13時間以内、延長する場合でも16時間まで

この点についても、貸切バス、トラック共通です。
『1日は24時間』であり、『休息期間は最低8時間』なので、『拘束時間の最高は16時間』までになります。

基本はこれだけです。
ほとんどの問題点はこの原則が理解できていれば解決できます。

客待ちで4時間以上あいたら休息期間にできる?(バスの場合)

勤務中に乗務員が休息期間に入れば、その部分は時間制運賃を加算する必要がなくなります。
休息期間に時間制運賃がかからないことを『中抜き』などと表現します。

休息期間に運賃は発生しない(あたり前)
休息期間に時間制運賃がかからないことはいわゆる『泊まり運行』で考えると明白です。

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★月曜日
午前8時実車~午後17時宿泊地到着
★火曜日
午前6時実車~午後18時到着解散
------------------------------------------------------------

この場合、月曜日の17時から火曜日6時まで11時間が休息期間となっています。
この11時間に時間制運賃が必要ないことは誰が考えても分かります。

むずかしく考えることはありません。
この考え方を応用して、1日(日帰り)の運行の間に『休息期間』を作れれば、同じようにその部分には時間制運賃がかからないことになります。

昼間の待ち時間を休息期間にする
では、どんな条件をクリアすれば、『休息期間』になるのでしょうか?

その答えは、改善基準告示の中に明記されています。

合わせて読みたい記事
貸切バス 運賃中抜きの条件をまとめてみます。(前編)

改善基準告示の中に書かれている休息期間の意味とは?

上記の質問の答えは貸切バスの分割休息という特例の中にあります。
 

改善基準告示の中に書かれた分割休息の部分
業務の必要上、勤務の終了後継続した8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合には、当分の間、一定期間(原則として2週間から4週間程度)における全勤務回数の2分の1の回数を限度として、休息期間を拘束時間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることができます。この場合、分割された休息期間は、1日において1回当たり継続4時間以上、合計10時間以上でなければなりません。

問題は、上記の書かれた4時間以上の文字です。
この『4時間』という言葉が、なぜか独り歩きしているんです。

実際に、ちゃんと読んでみると、分割休息のポイントは次の通りです。

分割休息を理解するためのポイント
①1回の休息は4時間以上

2時間や3時間では休息期間にすることができません。

②休息期間を分割して使うなら、1日の休息期間の合計は10時間以上

昼間に4時間の休息期間をとったのであれば、勤務後の休息期間は6時間以上確保する必要があります。
つまり、分割休息を選択した場合の拘束時間は、最大14時間に短縮されます。

③期間は基準日を起点に2週間から4週間

この決まりは、分割休息を連続して適用しないための予防線です。
この期間を定めなければ、『1月から6月は毎回分割休息、7月から12月は通常休息』などという使用を認めることとなって、乗務員の健康を守れないからです。

④勤務終了後に8時間以上の休息が確保できないやむを得ない理由があること

ここが一番大切です。
勤務終了後に、余裕で12時間の休息がとれるのにも拘らず、お客様待ちで4時間空いたからと言って、そこを無理やり休息期間にすることはできません。

貸切バスやトラックのIT点呼と遠隔点呼の違いを分かりやすく説明します
遠隔点呼とは? IT点呼に比べると、かなり広範囲に利用できそうな点呼方法です。 ただし、いろいろ条件がつきます。 遠隔点呼のメリット 1.Gマークやセーフティなど、外部認証がなくても利用できる これは大きいメリットです。 IT点呼の場合は、...

分割された4時間は自由時間?

休息期間は単なる自由時間ではありません。
厚生労働省が考える休息期間とは次のようなものです。
 

厚労省が考える休息期間とは?
✅本人が入ろうと思えば、お風呂に入ることができる。
✅体を伸ばして休むことができる。
✅好きにタバコが吸える。

上の3点ができなければ休息期間ではない、とは言いませんが、これくらい自由な時間で初めて休息期間と呼べるのです。
例えば、以下のようなケースではいくら建前で休息期間と言っても認められません。

✅バスの中で休め、と言われた
✅会社からひっきりなしに電話がかかってくる
✅いつまで寝てていいのか、わからない(1時間で出発になる可能もある・・・)

分割休息の特例はあくまでも特例ですので、かなり使用が限定されます。
繰り返しになりますが、この特例の趣旨は、繁忙期にドライバーが業務終了後、8時間以上のまとまった休息を確保できない場合に、やむおえず休息期間を分割するすることであることを忘れてはいけません。

どうすれば分割休息をうまく活用できる?

貸切バスやトラックで、お客様の観光時間待ちや荷物の積み込み待ちのことを、客待ち、荷待ちなどと表現します。
この時間は基本的に労働時間です。

つまり、運転していなくとも、業務に対応する必要がある時間は労働時間と考えるわけです。

では、せっかくの分割休息制度。
どうすれば、うまく利用(活用)できるでしょうか?

分割休息を安心して利用するためには?
①4時間が最低時間

可能であれば、5時間は確保したいところです。
4時間ぎりぎりだと、いろいろ問題があります。

②車内以外の場所で休んでもらう

貸切バスの車内で、完全に体を伸ばして休む場所を探すのはむずかしいでしょう。
旅館業法における宿泊施設を会社が手配(予約)して、乗務員さんに利用してもらいましょう。

③業務への復帰時間は明確に決める

たとえば、午後1時からお客様が観光地に入り、運転手さんは休息期間に入ったとします。
その際に業務復帰の時間を明確に午後5時なり午後6時と決めておくことが必要です。
なぜなら、いつ呼び出しがかかるかわからない状況は、休息期間とは呼べないからです。

④休息期間から復帰したときは中間点呼

特に明示されているわけではないですが、休息期間から復帰したときは電話で中間点呼を実施しましょう。
その際、アルコールチェックも行っておくと万全です。

分割休息に関する社内規程と同意書を作成しましょう

分割休息を実施するためには、乗務員さんたちに一定の協力を求めなければなりません。
休息を分割するというのは、乗務員さんたちにとって不利益な取り扱いとなりますから、雇用側として従業者に協力を求めるのであれば、社内に規程が必要です。

分割休息の社内規定を作ろう
前述した『分割休息の条件』を文書化したものを社内規程として残しましょう。
当社のサポート先のお客様には、テンプレートをお配りしております。

社内規程と同時に、同意してくれた乗務員さんたちの同意書も保管しましょう。
この規程は乗務員さんの健康を守るためのものですから、同意に異論はないはずです。

合わせて読みたい記事
貸切バスの分割休息に関する社内規則のテンプレート

いざとなったら休息中止!

『お客様の体調が悪くなった』、『急な天候変化で予定が早まった』などのケースではどうすればいいのでしょうか?
その場合は、分割休息を中止にすればOKです。

すぐに業務に復帰することができます。
但し、休息期間ではなくなりましたので、休息開始の時点から時間制運賃は発生します。

また、この業務が終わった後で、乗務員さんに8時間以上の休息期間を与えられないのであれば、勤務面、健康面での、会社側の配慮が必要になります。

下限割れには二種類ある!!

分割休息はあくまでも、業務上やむおえず、本来の時間に8時間以上の休息を与えられない場合の特例です。
会社の営業的な戦略で、この特例を乱用しないようにしてください。

また、分割休息でいわゆる『中抜き』をしている場合、最低運賃を割り込んでいる可能性も考えられますので、巡回指導や監査の際に厳しくみられる可能性があることも忘れないでください。
支局による一般監査は、あくまでも実態で評価しますので、書類上拘束を解いていても、実態上は勤務していると判断されることもあります。

運賃の下限割れには2種類ある
運賃の下限割れには二種類あります。

①運賃・料金事前届出義務違反
②運賃又は料金の割戻し禁止違反

どちらも60日車の違反ですが、その内容も根拠法令も全く違うところにあります。
詳しくは以下の記事をお読みください。

下限割れが心配なら読んでおきたい記事
貸切バス 運賃料金の下限割れには二つの種類がある

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