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貸切バス 乗務員のアルバイトは可能か?

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労働問題の悩み

事業用自動車の乗務員は選任が必要

皆さんもよくご存じのように、事業用自動車の乗務員が実際に乗務するためには『選任』というプロセスが必要です。
実際にご覧になるとわかりますが、乗務員を管理する台帳には『雇い入れ日』と『選任日』という2つの記録を残す欄があります。
つまり、会社に雇い入れた日と乗務員として選任した日には違いがあることが前提になっています。

乗務員を選任するには、以下の手順が必要です。
●初任診断を受ける
●健康診断を受ける
●運転経歴証明書をとる
●初任運転者教育を行う
 
初任運転者の選任プロセスについては以下の記事をご覧ください。
貸切バス 乗務員の選任手順

 

そもそも選任されるとは?

乗務員として『選任』されるということは、『会社のドライバーとして正式に認められる』、ということです。
この『せんにん』は『選任』であって『専任』ではないので、運行管理者や整備管理者を『兼任』することができます。
『選任』はあくまでも一定のプロセスを経て『選ばれ任される』ということですから、乗務員が課せられる義務はこれ以上でもこれ以下でもありません。
 

ドライバーとしてアルバイトすることは可能?

結論から言えば可能です。
この場合のアルバイトには『旅客自動車運送事業の乗務員』も含まれます。

■実例
中堅バス会社Aで『貸切』と『特定』の両方で選任されている40歳代の乗務員、イトーさんがいます。
イトーさんの休日は土曜日と日曜日、祝日です。
イトーさんは休日に別の県の貸切バス事業者Bでレジャー施設の送迎バスの乗務員としてアルバイトをしています。

 

法的な問題は?

あるバス会社さんに乗務員として選任されているドライバーさんを、『他の会社が乗務員として選任してはならない』、という決まりはありません。
意外に思われる管理者の方が多いようですが、運行管理者やその補助者、整備管理者などと違って、乗務員には他社での兼任を禁止する法令は存在しません。
※運行管理者等の場合は、同じ会社の別営業所ですら兼任が禁止されています。

Q:先の例のイトーさんが、疲労が原因となる居眠り運転により物損事故を起こした場合の責任についてどう考えればいいのでしょうか?
答えを考えてみてください。

1:メインで勤めている中堅バス会社Aが責任を持つ。
2:アルバイトで働いている別の件のバス会社Bが責任を負う。
3:イトーさん本人が責任を持つ。

 

その答えは?

答えは3番です。
と言うよりも、3番以外には選択肢がありません。
バス会社Aは土日祝日の休みを保証しています。
この週末の時間のことを休息期間と呼びますが、この時間はドライバーの自由時間であって、これをどんなことに使おうとあくまでもドライバーの自由です。
 
これはBにとっても同じで、ドライバーが勤務する土日以外はBから見るとドライバーの休息期間なので、このウィークディにイトーさんが何をしようと知ったことではありません。

これは監督官庁の目線でも同じことで、Aを監督する支局から見ればAは法令で決められた以上の休息期間を与えていますからAに何らの落ち度はありませんし、Bについて同じことが言えます。

 
つまり、イトーさんが何らかの事故を起こし、たとえそれが疲労を原因とした健康問題に起因するものだとしても、A社、B社共に責任を負うまでには至らない、と考えられるのです。
 

そんな事故を防ぐためにはどうすれば?

イトーさんが事故を起こした場合にいろいろと調べられるのはA社の方でしょう。
なぜなら、B社は40歳代のイトーさんが土日の勤務だけで生計を立てているとは考えないでしょうし、A社がメインの勤務先であることをイトーさんから聞いて知っているはずだからです。

では、事故が起きた場合に、A社が自社の抗弁のためにできることはあるのでしょうか?
唯一あるとすれば『乗務員の兼業を禁止する』ことだと思われます。
乗務員の兼業を禁止する法令はありませんが、社内の『服務規程』などで『他社での乗務員を含む副業の禁止』を明記しておくことで、A社はその責任をある程度回避できるはずです。
加えて服務規程に、『休息期間はその存在意義を考慮して、体調の回復を意識した行動をとること』などの推奨行動が記載されていればなおいいでしょう。

 

最期に

最近、バスに関係する事故や不祥事が増えています。
会社が管理できる部分は多くありませんが、いざ事故や不祥事が起きた時に慌てることのないように、しっかりと日ごろから二重三重の対策をとられることをお勧めいたします。

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】