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【特定旅客】送迎バスで利用者からお金をとってはいけないのか?

2022年11月24日12時53分

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。


今回は、同業者の行政書士先生からのご質問でした。
 
今度、新規で特定旅客運送事業の許可を依頼されたが、ヒアリングをしているうちに、少し不安を感じる部分があったので、教えて欲しいとのことです。

送迎バスは利用者から運賃を取ってはいけないのか?

新規で特定許可の申請を考えているお客様は、埼玉県の秩父地方にあるレストランです。
駅から離れたところにあるのですが、地元のジビエを使ったフレンチが評判のお店です。

このお店、今までは自家用のミニバンでお客様を送迎していたのですが、最寄り駅からお店までの距離が5キロ以上あることに加え、送迎に使っていた車両も10年目を迎え、故障も多くなってきたので、『この際だから、送迎はプロに任せよう』ということになったそうです。
 
お店には、自家用車で来店される方も多く、送迎バス利用のお客様との比率だと、6:4くらい。
これまでは、自家用ナンバーだったこともあり、送迎バス利用者と自家用車利用のお客様には差を設けてこなかったのですが、『緑ナンバーにする機会に一定の差をつけたい』と考えているようです。
 
具体的には、送迎バス利用者から、『送迎協力金』のような名目で100円くらい費用負担してもらうことを考えているようです。

 

需要者と取扱客の違いを理解する

特定旅客という許可を考える上で、需要者と取扱客(利用者)の違いを理解することが大切です。

需要者とは?
今回のケースで言うと、フランス料理を提供するお店が需要者となります。
お堅く言うと、特定旅客事業者(バス会社)と運送契約を直接結ぶ相手となるそうです。
 
取扱客とは?
今回のケースでは、お店を利用する(かつ送迎バスを利用する)お客様ということになります。
お堅い言い方をすれば、需要者の事業目的を達成するために需要者に従属する者ということです。

 

▶学校を例にすると、学校が需要者になり、生徒や先生が取扱客となります。
▶工場なら、会社が需要者、従業員が取扱客ですね。

 

乗合類似(ノリアイルイジ)行為って?

駅などから出ていて、誰でも乗車できるバスのことを乗合バスと言います。

他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業のうち・・・
 
不特定多数の旅客を運送するバスのことを、『一般乗合旅客自動車運送事業』
乗車定員10人以下の自動車を使用して、一個の契約により貸し切って旅客を有償で輸送する事業のことを、『一般乗合旅客自動車運送事業』
乗車定員11人以上の自動車を使用して、一個の契約により貸し切って旅客を有償で輸送する事業のことを、『一般貸切旅客自動車運送事業』

と呼びます。
 
文字づらを読んでいただければわかるとおり、乗合バスだけが個々(一人一人)との契約で運行することを許されているわけです。

 
タクシー(一般乗用)も個人でお金を支払いますが、駅から自宅への帰路の途中で、いきなり他人が乗り込んでくることはありませんね。
お金を支払うのが個人でも、乗合バスで支払う運賃とは大きく性質(契約)が違います。

乗りたいところで乗車して、降りたいところで降車する。
乗客は、乗車した区間に応じた分の運賃を、その場で支払う。
このような形態の運行が許されているのが、乗合バスです。
 
先ほどの例のような場合、送迎バスを利用したお店のお客様が、運賃に相当する分の協力金(この際、呼び方は関係ない)を支払った場合、その行為は、(どこで精算しようとも)乗合類似(ノリアイルイジ)行為と呼ばれる禁止行為にあたることが考えられます。
 

 

根拠法令は?

残念ながら、明確な根拠法令はありません。
あえて言うのであれば、特定旅客自動車運送事業の許可要件の明確化についての要旨(平成16年3月16日付け国自旅第230号 自動車交通局旅客課長通達)というものに、以下のような文言があるくらいです。

(2)取扱客
① 一定の範囲に限定されていること。
② 需要者の事業目的を達成するために需要者に従属する者を送迎する場合、需要者が自己の施設を利用させることを事業目的として客を送迎する場合等、需要者の負担で輸送することに十分合理性が認められる取扱旅客であること。

 

上記の一文をもって、絶対に取扱客に費用負担を求めてはいけないとはなりません。
 
しかし、この基準の意味は、需要者(お店)は、取扱客(お客様)が支払った料金(料理に対する対価)から得られた利益の中で、特定旅客にかかる経費を負担すべきと考えられます。
※この点、運輸局の担当者の方に確認しました。
 
つまり、送迎バスを利用した方から個別に費用を徴収するのではなく、できれば、一律に送迎バス費用を料理単価に上乗せして、全体でその経費を負担する方法が望ましいということです。

 

運賃の請求により利益を出すような脱法行為も?

特定バスで、利用者からお金をもらうことについて、もう一つ大きな心配があります。
利用者に運賃相当額の負担を求めることで、ひょっとすると需要者側に利益が出てしまう可能性を否定できないからです。

バス会社に支払う送迎バス代金が、月に60万円だったとします。
利用者の方に、一律の負担を求めていたら、この60万円を超えてしまったというケースです。
今回のお店のようなケースでは考えられませんが、一度に多くの子どもが乗車するスイミングスクールのバスなどでは、ひょっとするとあり得ることかもしれません。
 
▶このようなケースの場合、行政から指導される相手も問題になります。
バスを運行している会社にとって、契約の相手はスイミングスクールですし、スイミングスクールが利用者に負担金の支払いを求めているかどうかなんて知らないケースがほとんどでしょう。
※むしろ興味がないはず。
 
そうなると、行政の指導を受けるのは、スイミングスクールでしょうか?それともバス会社?

 

この点についても確かめました。
運輸局の担当者さんのお話では、そのような問題が見つかった場合は、バス会社と需要者(スイミングスクール)の双方から話を聞くとのことです。
 
『特定旅客の乗合類似行為』について、行政が指導した事例を耳にしたことはありませんが、特定バスを運行しているバス会社さんは、一度取扱客(利用者)の費用負担について、需要者の話を聞いておいた方がいいかもしれませんね。

 

結論

送迎バスに乗車したお客様が、チャリンチャリンと運賃を支払ってはいけないことはわかりました。
しかし、送迎バスの利用者に負担を求めてはいけない、と決まっているわけではないこともわかりました。

では、送迎バスを利用しないお客様から不満がでたらどうすればいいのでしょうか?
これは、私の感覚になりますが・・・
 
送迎バス利用の方からいただくのではなく、利用されない方にサービスするのであれば、特に問題にはならないはずです。
自家用車で来てくださったお客さまには、アイスクリームをサービスする、なんていうのはいかがでしょう?

 

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】

 

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