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【貸切バス】運送引受書の注意点をまとめました。

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実務全般

運送引受書の記載、管理は適正になされていますか?
巡回指導や監査などで指摘を受けた事業者さんにお聞きすると、運送引受書に関する指摘が多くみられました。
今回は、行政側と事業者側で少し温度差を感じる、運送引受書の注意点をまとめておきます。
 

何を記載しておけばいいの?

運送引受書には、運送に係る基本情報がすべて記載されていなければなりません。

☑申込者の氏名または名称及び住所並びに電話番号その他連絡先
☑運送契約を結ぶ者の氏名または名称及び住所並びに電話番号、FAX番号
☑旅客の団体の名称
☑運送を引き受ける貸切バス事業者の名称、住所及び電話番号その他連絡先
貸切バス事業の許可年月日・許可番号・営業区域
☑乗車申込人員
☑乗車定員別または車種別の車両数
☑配車の日時及び場所
☑運行の経路並びに主な経由地における発車及び到着の日時
☑旅行の日程
(出発時刻、終着予定時刻、宿泊または待機を要する場合はその旨その他車両の運行に関連するもの)
旅客が乗車する区間
☑事業用自動車について締結されている損害賠償責任保険契約又は損害賠償責任共済契約の概要
☑乗務員の休憩地点及び休憩時間(休憩がある場合のみ)
☑交替運転者を配置しない場合にはその理由
☑車掌の乗務の有無
☑乗務員の運転又は業務の交替の地点(運転又は業務の交替のある場合に限る。)
運行の開始及び終了の地点及び日時
☑当該運送に係る実車走行距離及びその要する時間
☑当該運送に係る総走行距離及びその要する時間
☑運賃及び料金の額並びに支払い方法
運賃及び料金の上限額及び下限額
☑特約事項がある時はその内容

 

かなりボリュームがあります。
特に忘れやすい記載事項は赤字で示してあります。
会社でお使いのフォームに含まれているかチェックしてみてください。
 

 

運送引受書は営業所で保管するべきですか?

必ずしも営業所で保管する必要はありません。
各事業者さんの本社などで一括保存することも可能です。
 

配車先が複数の場合はどう書けばいいの?

配車先が複数の場合とは、ツアーのお客様を別々の場所にお迎えに行くケースなどが考えられます。
その配車先をすべて1枚の運行引受書に記載するのは面倒ですし、ごちゃごちゃしそうです。

そんな時は、運送引受書に加えて、配車表を添付することをお勧めします。
運送引受書の配車先に、「別紙配車表」と記載して、別にエクセルなどで作成した配車表を添付すればいいのです。

 

運送引受書という名前でなくてはダメですか?

運送引受書の名前にこだわる必要はありません。
運送引受書の趣旨は、一般貸切旅客自動車運送事業者と消費者の間の取引内容の明確化、公正な取引の確保ですから、その目的が満たされる内容であれば、書面の名称はなじみやすいものに変えて問題ありません。

・運送契約書
・旅行申込書
・運送依頼書
いろいろ考えられると思いますが、自社の業務形態に合ったものを選択すればいいと思います。

余談ですが、運送引受書という書面がなくてもいい場合があります。
年間契約などの場合、運送引受書に記載すべき事項が網羅されていることが判別できるのであれば、基本契約書に料金表、運行ダイヤ関連など、複数の書類で内容が簡単に理解できるようにすればOKな場合があります。
詳しくは支局の担当者に確認する必要がありますが、知識として覚えておいてください。

 

【関連記事】
『年間契約について詳しく』
 

手数料は運送引受書に書くのですか?

手数料とは貸切バス事業者が同じ貸切バス事業者や、旅行代理店、エージェントなどに支払うマージンの総称です。
貸切バス事業者がいくらのマージンを支払おうと、消費者(ツアー客など)には関係のないことですから、手数料を運送引受書に記載する必要はありません。
 
ただ、手数料をいくら支払ったかどうかが不明だと、安全運行のために運賃料金の下限を設定した意味がありませんから、手数料の程度を示した書面を運送引受書と一緒に保存する必要があります。
この書類は一緒に保存するだけでよく、添付してエンドユーザーに開示する必要はありません。

 

この点については、2019年5月から制度が変わります。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
運賃料金の下限割れには二種類ある

 

運送引受書は必ず紙で手渡す必要があるのですか?

いいえ、必ずしも紙である必要はありません。
運送の申し込みを電子データで受け取って、運送引受書を電子データで送ることも可能です。
その場合、メールなどに添付して送ることになると思いますが、メールの送信履歴は保存しておく必要があります。
電子データとして送信した運送引受書は、電子データの状態で1年間保管します。

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契約の健康を守ろう

運送引受書は一般企業で考えると、基本契約書にあたるものです。
業態を変えれば、見積書の一面も持ち合わせるかもしれません。
つまり、エンドユーザーとの信頼関係を構築するための大切な書面です。
 

家を建てるときに仕様書なしで契約する人はいません。
運送引受書は運行の仕様書にあたります。
『巡回指導や監査の対策』なんて考えずに、しっかりとした運送引受書を作成しましょう。

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】

 

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(中小企業診断士/行政書士 高原伸彰)