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貸切バスの年間契約を詳しく解説します(令和6年1月加筆修正版)

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一般貸切旅客

貸切バスには年間契約という料金制度があります。
年間を通して需要のある仕事(企業送迎など)で特別な契約を結び、クライアント側にメリットのある料金を実現しようとする制度です。
しかし、この制度は少しわかりずらい部分がありますので、詳しく解説いたします。

年間契約の意味するところ

貸切バスの年間契約を企業送迎に利用する場合を考えます。
年間契約は業務を年間契約とするのではなく、車両を年間で貸し切る(借り切る)契約と考えます。
大型でも、小型でもなんでもいいのですが、1台の車両を決められた日数、同じような条件で使用する場合を想定した仕組みです。

年間契約金額の計算

年間契約の計算式は、以下のようになっています。

年間契約の運賃計算
1日の運賃×365日×実働率=年間契約運賃

では、ここからは、年間契約運賃の計算方法をひとつひとつ考えていきましょう。
最初は、1日の運賃の算出です。

1日の運賃

1日の運賃は、通常の貸切バス運賃の計算をします。
時間制運賃には、前後の点検時間も含めなければなりません。
距離制運賃も加算します。

例を使って考えましょう
企業送迎の仕事で以下のような場合を考えます。
(月)~(水)運転時間4時間・距離50㎞
(木)~(金)運転時間5時間・距離60㎞
(土)運転時間2時間・距離30㎞

このような場合の1日の運賃の計算は、木曜日~金曜日の運賃を基本とします。
要するに、一番高い日の運賃を適用するということです。

仮に、時間制運賃5,000円、距離制運賃150円に設定したとします。
すると、1日の運賃額は、
5,000円×5時間+150円×60m=34,000円
となります。

これで1日の運賃が出ました。
次は、実働率です。

実働率とは?

実働率というのは、1年間実際に動いた車両数(延実働車両数)を1年間の平均保有車両数に365をかけた数値(延実在車両数)で割った数値です。
そのバス会社の前年度の仕事っぷり、と言っていいでしょう。

あるバス会社の実働率が45%だったとします。
その会社に、新しく企業送迎の仕事のオファーがありました。
年間200日くらい運行しますから、実働率約55%の仕事です。

実働率45%の会社に55%稼働するような仕事がきたら、それは受けた方が得でしょう
という感じです。

ですから、年間計算で利用する実働率は、そのバス会社の前年度の稼働率以上、各運輸局の平均実働率以下で決定します。

関東の場合なら・・
年間契約の実働率は『国土交通省が決めた運賃ブロックの各実働率』と『貸切バス事業者の実際の実働率』との間の数値にするように定められています。
関東ブロックのある貸切バス事業者の実働率が42.65%だったとしたら、年間契約の式に使用する実働率は
42.65%から67.58%(関東の平均)までの間にする必要があります。

自分の会社の実働率を調べるにはどうすればいいのでしょうか?
簡単です。
直近年度の輸送実績報告書に記載されているはずです。

では、実働率をどのように設定すればいいか、考えていきましょう。

実働率の決め方

年間契約を結ぶとき、問題になってくるのが、お客様が運行して欲しい日数です。

年間契約における車両の運行可能日数は、以下のように計算します。

運行可能日数の計算方法
車両を動かしていい日数についても、前述の実働率が関係してきます。
運行可能日数=365日×実働率×1.4倍

運賃の計算式を思い出してください。
年間契約運賃=1日の運賃×365日×実働率

運行可能日数は、
運行可能日数=365日×実働率×1.4倍

赤いアンダーラインの引いてあるところが同じですね。
ちょっと難しいですが、要するに、年間契約というのは、365日×実働率に相当する日数の運賃で、1.4倍の日数運行しますよという契約なんです。

試しに、1を1.4で割ってみてください。
1÷1.4=0.7142‥‥
これが、年間契約にするとおよそ3割安くなるという意味です。

実働率を求めましょう
お客様が年間で280日間の運行を希望している、と考えてみましょう。

運行可能日数=365日×実働率×1.4倍

この式に数値をあてはめます。
280日=365日×実働率×1.4倍
実働率=280日÷365日÷1.4倍=0.547945…だから、0.548でいいでしょう。

試しに検算してみます。
運行可能日数=365日×0.548×1.4=280.028日≒280日

つまり、実働率は、54.8%となります。

『年間契約書に記載できる運行日数』は最大でも338日まで、と決められていますから注意してください。
なぜ365日動かせないかというと、365日-338日の残り27日は整備点検や車検などの保守に充てることを想定しているわけです。

これで、1日運賃も実働率も計算できました。
では、ここからは先ほどの具体例で計算してみましょう。

具体的な計算例

先ほどの具体例を再度見直しておきましょう。

例を使って考えましょう
企業送迎の仕事で以下のような場合を考えます。
(月)~(水)運転時間4時間・距離50㎞
(木)~(金)運転時間5時間・距離60㎞
(土)運転時間2時間・距離30㎞

このような場合の1日の運賃の計算は、木曜日~金曜日の運賃を基本とします。
要するに、一番高い日の運賃を適用するということです。

仮に、時間制運賃5,000円、距離制運賃150円に設定したとします。
すると、1日の運賃額は、
5,000円×5時間+150円×60m=34,000円
となります。

1日運賃は34,000円となっていました。
実働率は54.8%です。

さあ、計算してみましょう!
✅年間運賃額
1日の運賃×365日×実働率=年間契約運賃

具体的な数値を入れてみましょう。
34,000円×365日×54.8%=6,800,680円
これが年間の契約運賃です。

✅運行可能日数
運行可能日数=365日×実働率×1.4倍

こちらの再度数値を入れてみましょう。
365日×54.8%×1.4倍≒280日

✅1日あたりの運賃は?
6,800,680円÷280日=24,288円

最初の運賃が34,000円でした。
それが、年間280日のチャーター契約を結ぶことで、24,288円になりました。

24,288円÷34,000円=0.714352…なので、ちゃんと約3割引きになっています。

精算は1日ごとにする(大きなデメリット)

なんだかお得な年間契約ですが、隠れた大きなデメリットがあります。

それが、以下の通達文です。

一般貸切旅客自動車運送事業者と旅行会社糖との間で締結する年間契約等に対する取り扱いについて
(前略)旅行会社からの要請により、年間契約の基礎となる走行時間及び走行距離を超えた場合の運行については、1日ごとに時間運賃、キロ運賃を基に別途精算を行うこととし、この旨を年間契約書に記載しなければならない。(以下、略)
具体的な事例で考えましょう。
契約走行時間は11時間、距離120キロとします。

□1日目 12時間 170キロ(空港から観光地へ)
□2日目  3時間  40キロ(都内見学)
□3日目 11時間 150キロ(観光地から空港)

仮に1日目から3日目まで一つの団体のツアーだっと考えましょう。
このケースの場合、3日で時間数26時間、距離数360キロですから、平均すると時間は9時間弱、距離はちょうど120キロです。
ツアー全体(1運行)で考えると、精算は必要ないのですが・・・・

先ほどの通達のとおりに考えると、1日目と3日目は追加精算が必要になってしまいます。
逆に2日目は、バス会社が大儲け、という感じです。

年間契約は、もともと企業送迎や学校送迎など、1日の運行時間と走行距離がおおむね決まっている運行に適しています。
旅行会社がツアーなどに利用する場合には、少し使いにくい部分があることも覚えておいてください。

こんなめんどくさい制度を使うくらいなら特定の方がいいのでは?
そう考える事業者さんも多いかと思います。

しかし最初の例で考えると、年間280日をこの企業さんの送迎に使用しても、残りの80日余りは貸切バスとして別の仕事で使えます。
別の仕事には一切流用できない特定との大きな違いはここです。

お客様に説明するのが少し面倒ですし、理解してもらうにも時間がかかるかもしれませんが、一定のメリットのある内容です。
積極的な利用をお考えになってはいかがでしょうか。

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