今回の記事は、2019年にUPさせていただいた記事のリメイク版になります。
いろいろとミスの出やすい初任運転者教育の実施方法、記録の保存などについて、詳しく解説いたします。
なお、この記事に記載の内容は、一般貸切に限定したものですので、同じ旅客でも、一般乗用、一般乗合には適合しない部分もあります。
予めご了承ください。
初任運転者教育の実施順序
初任運転者教育を、法令等のルールに沿って実施しようとすると、その順序がとても大切になってきます。
まず、ココを理解するようにしましょう。
- 初任運転者教育の実施順序
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①運転記録証明書の取得
②適性診断の受診
③座学(10時間以上)
④実技(20時間以上)
⑤見きわめ
⑥選任
※③と④については、特に順序に決まりはありません。
①運転記録証明書の取得
ここからは、上で示した初任運転者教育実施の順序に沿って、その理由も説明しながら、勉強していきたいと思います。
- なぜ運転記録証明書が必要なの?
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運転記録証明書が必要な理由は、この後に行う適性診断の種類を決めるためです。
適性診断には、いくつかの種類があります。
初任運転者は、それまでの運転経歴や年齢によって、基準に合った適性検査を受ける必要があります。
そのため、適性診断の申し込み前に、必ず運転経歴を調査する必要があるわけです。
※適性診断の前には、必ず運転記録証明書が必要、と覚えてください。
②適性診断の受診
運転記録証明書を取得したら、次に適性診断を受診します。
適性診断を受診する理由は、初任運転者個人の特性を見きわめて、その人に合った教育プログラムを作成するためです。
- 適性診断にも種類がある?
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1)初任診断
一般的には、この初任診断を選びます。
2)適齢診断
もしも、初任運転者が65歳以上だったときには、適齢診断を受けることで、初任診断を受けたことになります。
3)特定診断
①運転記録証明書の取得が必要だった理由がここにあります。
今回入社した初任運転者の運転記録証明書を確認した結果、この方が事故惹起者に相当する場合、適性診断は特定診断を選ばなければなりません。
特定診断には、ⅠとⅡがあります。
- 特定のⅠとⅡの違いは?
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特定Ⅰ
①死亡又は重傷事故を起こし、かつ、当該事故前の1年間に事故を起こしたことがない者
②軽傷事故を起こし、かつ、当該事故前の3年間に事故を起こした事がある者
特定Ⅱ
死亡又は重傷事故を起こし、かつ、当該事故前の1年間に事故を起こした者
③座学
ここまできて、初めて実際の教育が始まります。
座学は10時間以上が必要です。
- 座学は何教科ある?
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1)事業用自動車の安全な運転に関する基本的事項
2)事業用自動車の構造上の特性と日常点検の方法
3)運行の安全及び旅客の安全を確保するための留意すべき事項
4)危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
5)安全の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適正な運転方法
6)ドライブレコーダーの記録を利用した運転特性の把握と是正
④実技
前にも書きましたが、上の座学と、こちら実技については、特に順番が問われるわけではありません。
ココで大切なことは、ハンドル時間とドライブレコーダーの録画時間です。
- ハンドル時間って何ですか?
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ハンドル時間というのは、文字通りハンドルを握って運転している時間のことです。
一般貸切の初任運転者教育では、実技訓練におけるハンドル時間は20時間以上と、明文で定められています。
★ドライブレコーダーの録画時間にも決まりがある?
こちらも20時間以上の録画保存が求められています。
- ハンドル時間の根拠法令等
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◆旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針
第二章 2 (2)初任運転者に対する特別な指導の内容及び時間
☑録画20時間以上の根拠法令等
◆旅客運送事業運輸規則 運用と解釈
安全運転の実技における訓練用自動車のドライブレコーダーの記録並びに運行記録計で記録した瞬間速度、運行距離及び運行時間の記録を3年間保存させること。ただし、一運転者に対して安全運転の実技に係る指導を20時間以上実施した場合にあっては、保存する記録は20時間分で足りる。
実技訓練の際、残しておいた方が良い記録についてご説明いたします。
- 実技訓練の記録
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①運行指示書
実技訓練は、実務の予行演習でもあります。
運行指示書は必ず用意し、初任運転者に読み方や工程変更時のルールも教えるようにしましょう。②運行記録計のデータ
セーフティの申請をしている事業者さんにとっては、特に大切なデータです。
ハンドル時間が20時間以上になるように、慎重に確認するようにしましょう。③運行日報
こちらも、実務に入る前に、その会社のルールを覚えてもらうために作成します。その他、運行前・運行後の点検表や点呼簿も必要になります。
⑤見きわめ
座学10時間以上、実技20時間以上が終わったら、最終的に事業用自動車のドライバーとして選任できる状態かどうかの見きわめをする必要があります。
- 見きわめってどうやるの?そもそも必要?
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実技訓練で録画した20時間の記録の中から、いろいろなシチュエーションを交えて、初任ドライバーの特徴がよくわかる内容の、おおむね15分程度の教材を作成して、それを確認しながら、本人とこれからの安全運行のために必要な改善点などを話し合う機会とします。
運輸局の担当者の方のアドバイスでは、良い運転は褒めて、悪いところは『どうやったら事故にならないか』を一緒に考えるという姿勢が大事だということです。
- 見きわめ実施の根拠法令
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2つの法令に分かれているので、わかりにくいのですが、指導監督指針と運用と解釈から読み取ることが可能です。
◆指導監督指針 第二章3(3)
◆運用と解釈 第38条(19)
初任運転者教育の記録の保存
初任運転者教育は、巡回指導や監査、セーフティの審査などでも、よくチェックされる部分です。
最後に、記録の保存について考えておきましょう。
- どんな記録が必要ですか?
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①点呼簿&日常点検簿
初任運転者教育の実地訓練は、実務の予行演習です。
実車と同じプロセスで出庫するようにします。
②運行指示書
指示書も作成して、読み方や修正の仕方なども勉強させましょう。
③ドライブレコーダー映像
20時間以上の映像を保管します。
車両の前方と、運転手を中心にした車内の映像が最低限必要です。
④運行記録計のデータ
デジタル、アナログどちらでも大丈夫なので、記録計のデータを残します。
このデータとドライブレコーダー映像が、ハンドル時間20時間の証明になります。
⑤日報
実務の予行演習として、日報も書かせて保管します。