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乗合バスみなしとは?(貸切バスの違法行為)完結編

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実務全般

前回までのあらすじ

沖縄の離島で、貸切バスが乗客から個別に運賃を回収して運行する、いわゆる乗合みなしの違反をしたのではないか?という情報が寄せられました。

一人2ドルで運行
~ 事実関係 ~
 
①クルーズ船の観光客が離島に到着
②『一般貸切』のバスが離島桟橋に待機
③観光客は、それぞれ個別に2ドルを支払い、バスに乗車
④バスは、離島ターミナルまで観光客を乗せて運行
 
※③の集金を行ったのは、バス会社の従業員さんです。
(実は、ここが一番の問題)

担当行政庁の沖縄総合事務局にも、この件は法令違反ではないか?との問い合わせをしましたが、結論は違法性はないとのこと。

違法性がないことの根拠
沖縄総合事務局 運輸部監査部門の見解
 
【運行を行ったバス会社に電話で確認した内容】
①確かに、米ドルで個別に支払いを受けたことは確認した。
②車両が一般貸切許可であることも確認した。
③料金を個別に回収したのは、バス会社の従業員であることも確認した。
 
【違法性がないことの根拠】
①運賃は個別に回収しているが、回収した運賃は旅行会社にまとめて渡している。
②バス会社は、後日旅行会社から運賃を一括でもらっている。
 
よって、このケースは、乗合みなしにはあたらず、違法性もない。

関東運輸局に問い合わせをしてみた

結論から申し上げますと、関東運輸局は違反であるとの見解でした。
何も問題だったかと言うと・・・

関東運輸局の見解
★バス会社の人間が運賃を回収していたところが問題
 
もともとの状態が下の図です。

バス会社の従業員が集金までしてしまったために、バス会社は旅行客と旅行会社の両方と契約をしたような、かなりいびつな構造になってしまいました。
 
一方、下のようにしたらどうでしょう?

バスと旅行客の(金銭的な)関係性はなくなり、旅行会社との単一契約となります。
とても自然な形です。

結論、今回の事例、関東運輸局ではNGとのことでした。
 
地方によって法令の取り扱いが変わるというのは、なんとも釈然としませんが、日本列島が長いことが原因でしょうか?

実は他にも地方によって見解が変わる事例がある

初任運転者の教育についても、地方によって見解の相違があります。
 
バス会社が廃業、別のバス会社が残ったすべてを買い取ったような場合です。

状況説明
Aバス会社が廃業、ABC観光バスがすべて購入
 
【状況】
①結果として、設備、従業員、顧客、すべてがABC観光バスのものになった。
②営業所や車庫、乗務員を含む従業員には、全く変化がない。

この場合、設備や人、顧客にも、何も変化がありません。
しかし、元Aバス会社の乗務員は、ABC観光バスにおいては、初任運転者となるはずです。
 
法令に沿って考えれば、当然、初任運転者教育は避けて通れません。
※この点、一般貸切は厳しく、例外はありません。

どこの地方運輸局かは控えるが・・・
お客様に迷惑がかかってはいけないので、特定名は避けますが、ある地方運輸局では、『このようなケースでは、初任運転者教育は不要である。』と答えています。
 
【その理由】
営業所や車両、顧客にも変わりがないのであれば、何ら危険がないので、改めて初任運転者教育をする必要はない。
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確かに、この回答は至極まっとうだと言えます。
でも、問題は、回答が至極まっとうかどうかではありません。
 
『営業所や車両、顧客にも変わりがないのであれば、何ら危険がないので、改めて初任運転者教育をする必要はない。』とする根拠法令なんか、どこにもないことが問題なのです。
 
さらに、このような回答をしたのは、この地方運輸局だけで、関東運輸局をはじめ、私の知る限り、他4つの運輸局では、『このような場合でも初任運転者教育は必要』と答えているところが問題なのです。
 
今回の乗合みなしもそうですが、同じ法令の中で仕事をしているのに、一部の地方の一部のバス会社だけが得をして、他が損をするようでは、やはりどこかおかしい。

皆さんは、どうお考えですか?
 

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】