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貸切バス トラック 効果のない教育なら休息させた方がいい

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その他

車庫を出れば一人

トラックにしても、バスにしても、タクシーにしても、ドライバーさんは一度車庫を出て行ったら一人で仕事をしなければなりません。
ツーマンで仕事をするような場合も、あるにはありますが、一人で乗務することが基本となります。
 
筆者も若いころはトラックドライバーでしたが、引っ越し荷物を運ぶとき以外は、99%ソロで運転しておりました。
バスの場合は、ガイドさんを乗せることも少なくないでしょうが、ドライバーが二人で乗務するのはかなりのレアケースになるでしょう。

一人で大きなトラックやバスを、時には100キロ以上のスピードで走らせる。
何十トンもの荷物を一人で運び、何十人もの人を一人で運ぶ。
極めて効率の高い輸送手段であり、ほんの100年前までは一般的ではなかったシステムです。
 
便利である分、リスクも高くなります。
一人で運転しているわけですから、万が一意識を失った場合はすぐ事故に直結します。
トラックの場合は、周囲への影響を考えれば済みますが、バスの場合は即乗客の命が危険にさらされます。

 

健康を守れるかどうかは本人次第

一人で運転するドライバーにかかるリスクのトップは健康問題でしょう。
現在のドライバー不足を考えると、高齢ドライバーを雇用せざるを得ず、健康面のリスクは年々高まっていると考えられます。
 
ドライバーの健康を守ることができるのは、ドライバー本人です。
現在、職業ドライバーの健康診断は年に1回以上と法令で定められていますが、会社でどんなにマメに健康診断をやっても、結局のところドライバーの健康を守れるのはドライバー本人以外にありません。

自分で自分の健康を守るには、そのための知識を頭に入れておくしかありません。
『なぜ病気になるのか』という予防医学の知識から、『病気とどう付き合っていけばいいのか』という対症療法的な知識まで、自分の体とマジメに向き合うには知識が必要です。
 
プロドライバーが自分の健康を守ることは、お客様や周囲の車、歩行者を守ることにつながります。
そして、そのための大切な知識を得る手段が『乗務員教育』です。

 

乗務員教育は巡回・監査のためではない!

プロドライバーのための教育は長年軽視されてきました。
『●●年●月の教育記録』という表題のA4用紙1枚に、国土交通省が指定するお題を書き入れ、ドライバーのシャチハタを押しておけば、記録として十分通用した時代が長く続いたのです。
 
昔は、その記録を前に『本当にやったのか、やっていないのか』という無意味な押し問答が繰り返されましたが、今は違います。
 
『記録があるということは、ちゃんとやったんですね。』
『でも、こんな資料しか残っていない教育に意味があるんですか?』
『効果がなければ、やっていないのと同じですよ』
となります。

ドライバーの教育は、巡回指導や監査のための対策ではありません。
ドライバーが必要な知識を得ることが、会社と従業員、そして乗客や荷主、周辺社会を守るためにもっとも有効な手段なのです。
 
若いドライバーに健康問題は少ないですが、運転そのものには多少心配が残ります。
高齢ドライバーは乱暴な運転はしませんが、健康問題や認知機能に心配が残ります。
それぞれの長所を生かし、短所をカバーするためには、本人にその方法を教える必要があります。

 

こんな人間が指導?

当社の教育プログラムをご利用いただいているバス会社にバス協会の指導がきました。
指導に訪れた某県のバス協会職員が、その会社の教育記録を見てこう言ったそうです。
 
『こんなに教育やってるの?』
『健康問題は毎月?』

こんなにやらなくてもいいんだよ
『健康なんて年1回でいいの』
こんなに記録が多くちゃ、ウソついてるように思われるよ
 
にわかに信じられない話です。
年配の職員だったようですが、あまりの時代錯誤に怒りがこみ上げてきます。
こんな人間が指導をしてはいけません。

なぜ従業員の教育には無頓着?

自分の子供を学校に行かせる必要がない、と考える親がいるでしょうか?
なぜ子供に教育を受けさせるのでしょうか?
 
逆に、自分の会社のドライバーの教育には無頓着なのに、なぜ子供の教育には熱心になるのでしょうか?
自分の子供一人が社会に与える影響と、自分の会社のドライバー十数名が社会に与える影響の大きさを冷静に比較したことがあるのでしょうか?

教育には時間が必要です。
社会人になって長年教育を受けてこなかったドライバーに一定の知識を得てもらうには、それなりの工夫と時間が必要です。
 
当社の教育プログラムが毎月3つのテーマに分けられている理由もここにあります。
一つのテーマを12ヵ月に1回、30分受けるよりも、たった10分でも4か月に1回の頻度で受けた方が教育効果は高まります。
 
更に、もっとも大切なテーマの一つである、健康に関する情報は毎月取り上げて、意識が自然に向上するように考えているのです。

効果のない教育をするなら休息させた方がいい

国交省が指定する教育項目の中に『交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因』というのがあります。
要は、ドライバーのどんな感情や体調が交通事故につながるかを知る勉強です。
 
この勉強するためのテキストを見ると、こんな内容が判で押したように書かれています。

【興奮状態の危険】
カッカしたり、カリカリするなどの興奮した状態の運転は、的確な判断ができないばかりでなく、他車の運転行為も気にさわり、仕返しをするなどの行動を起こしがちです。
例えば、追い越されると追い抜き返そうとする無理な運転をするなど、事故の原因となることを理解させましょう。

 
楽しいですか?
頭に入りますか?
 

やるなら記憶に残る教育を

当社の教育は、ドライバーさん達が楽しみにしてくれて、頭に残る内容を第一に考えています。
たとえば、今年度7月の教育は貨物と旅客共通で、テーマは3つですが、こんな内容を予定しています。

①『交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因』
カッカしたり、イライラしたりするのが、運転によくないことは誰だってわかっています。
それを注意しなさい、と言われても余計に腹が立ってきます。
 
当社は伝わる教育を目指しています。
だから、このテーマで勉強する内容はズバリ『アンガーマネジメント初級編』です。
話題になっている『怒りを抑えるためのテクニック』アンガーマネジメントを一緒に勉強します。
 
②『安全性の向上を図るための装置を備える事業者自動車の適切な運転方法』
今回はESC(スリップの絵が出る装置)のしくみを分かりやすく勉強します。
ESCのしくみを答えられるドライバーさん、何人いますか?
 
③『健康管理の重要性』
今話題の歯周病について勉強します。
歯周病は単なる口内の病気にとどまらず、認知症との関連も指摘されています。
歯周病の予防から健康を保つためのテクニックを勉強します。
 
健康管理の重要性は特に理解してもらいたいテーマですので、ナルミちゃんという女の子と、マツコ・デラックスさんをモデルにしたおばさん?の掛け合いで楽しく勉強していただきます。
※このコンビが登場するのは6月からです。

教育に少しだけ投資してください

ナスバさんのテキストや、インターネットの資料をただで手に入れて、効果の上がらない教育をする(したふりをする)時代はとっくに終わりました。
先に出てきた某県バス協会の指導員などは、正に悪しき時代の遺物です。
 
すべての車が自動運転化されれば、こんな問題はなくなっていくのでしょう。
しかしその時代が来るまでは、もう少し時間が必要です。
ドライバーの教育にちょっとだけ投資をして、安全な経営を目指しましょう。

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】