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乗合バスみなしとは?(貸切バスの違法行為)

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実務全般

今回は、沖縄県の離島で本当にあった事例のお話です。
『乗合みなし』問題点と、行政の考え方を解説します。

2023年3月のクルーズ船

今年の3月に、欧米の観光客を大勢乗船させたクルーズ船が離島に到着しました。
 
まず最初に、『事実関係だけ』を記載しておきます。

一人2ドルで運行
~ 事実関係 ~
 
①クルーズ船の観光客が離島に到着
②『一般貸切』のバスが離島桟橋に待機
③観光客は、それぞれ個別に2ドルを支払い、バスに乗車
④バスは、離島ターミナルまで観光客を乗せて運行
 
※③の集金を行ったのは、バス会社の従業員さんです。
(実は、ここが一番の問題)

貸切バスと乗合バスの違いは?

貸切バスの場合、乗客の一人一人から個別に運賃をいただくことはできません。
 

一般貸切とは?
乗車定員11名以上の自動車を使用して、1個の契約で1台の自動車を貸し切って運送する事業のこと。
運賃は、契約責任者が一括して支払います。

乗合バスとは?
乗合バスというのは、一般的には路線を定めて定期的に運行、設定された運行系統の停留所で乗客が乗り降りする運行形態のことをいいます。
運賃は、乗客が個別にその場で支払います。

違法行為『乗合みなし』とは?

一般貸切の許可によって運行している貸切バスには、『乗合みなし行為』をしてはいけない、という決まりがあります。
 
『乗合みなし』とは、貸切バスなのに、その場で乗客一人一人から運賃を回収するような営業行為のことです。

なぜダメなの?
乗合バスというのは、地域の交通インフラを支える重要なものです。
需要があって、黒字の路線もあれば、時間帯によっては、乗客が一人も乗っていない状態でも運行しなければならない赤字路線もあるでしょう。
 
そのような状況の中で、一般貸切の許可で運行するバスが、需要のある黒字路線だけをつまみ食いするように運行したらどうでしょう?
定期的に運行する乗合バスは営業をやめて、過疎地域の交通インフラは崩壊してしまいます。
 
特定バスにおけるクリームスキミング(チェリーピッキング)の禁止も、同様の考え方からきたものです。

沖縄総合事務局さんの見解

上記の考え方を当てはめると、今回離島で行われた運行は、乗合みなしと判断できます。
 
しかし、当社の問い合わせに対し、当該運行を行ったバス会社へ電話聞き取りを行った沖縄総合事務局の運輸部監査部門は、『違法性がない』と回答されました。

違法性がないことの根拠
沖縄総合事務局 運輸部監査部門の見解
 
【運行を行ったバス会社に電話で確認した内容】
①確かに、米ドルで個別に支払いを受けたことは確認した。
②車両が一般貸切許可であることも確認した。
③料金を個別に回収したのは、バス会社の従業員であることも確認した。
 
【違法性がないことの根拠】
①運賃は個別に回収しているが、回収した運賃は旅行会社にまとめて渡している。
②バス会社は、後日旅行会社から運賃を一括でもらっている。
 
よって、このケースは、乗合みなしにはあたらず、違法性もない。

違法でないのなら貸切の利用範囲が広がる(大歓迎!)

当社は、今回運行をした離島のバス会社さんの敵ではありません。
逆に、今回のケースが違法でないのなら、全国でこのような事例を認めて欲しいと思っています。

実際に認可されなくて困っているケース
神奈川県の事例
 
当社がご相談を受けているケースをご紹介しておきます。
 
①一般貸切で、駅からホテルの送迎を行いたい。
②今までは、自車の白バスなので無料だったが、今後は経費もかかるので、有料(片道100円)にしたい。
③宿泊料の精算時にバスを利用したかどうかがわからない(確かめるのも面倒)ので、バス運賃は宿泊費とは別に精算したい。
④できれば、バスに乗り込む段階で100円を払ってもらいたい。

もしも、沖縄の離島のケースが合法なのであれば、以下のようなスキームで上記の運行は可能になります。

こうすれば合法
①バスの運賃は、運転手がその場でお客様から徴収する。
②集めた運賃は、バス会社が取りまとめて(手を付けずに)ホテル側に支払う。
③ホテル側は、年間契約として毎月バス会社に運賃を一括で支払う。
問題なしの理由
①運行契約は、バス会社とホテル相互間のもの(1個の契約)なので、合法。
②運賃は乗客が個別に支払っているが、バス会社は集金しているだけなので、何が問題なのかわからない。
③集めた運賃は、ホテルにそのまま渡しているので、何が問題なのかわからない。
④バス会社は、ホテルから、一括して運賃を入金してもらっているので、合法。

現在、沖縄総合事務局さん、関東運輸局さんにご相談中です。
続報が入り次第、また記事、メールでご連絡いたします。
 
皆さんも、この件について、何かご意見がありましたら、ぜひご一報ください。
よろしくお願いします。
 

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】