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【貸切バス】年間契約なら運送引受書はいらない?

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実務全般

年間契約とは?

貸切バスの業界における『年間契約』は、他の業界のそれとは少し違う意味を含みます。
なにが違うかというと、貸切バス業界での年間契約では、単に契約が長期にわたるだけではなく、運賃に競争力が増す効果があるのです。

年間契約は文字通り年間を通じて運送契約を結ぶものです。
年間契約について、サービスを提供するバス会社側のメリットとして、経営的な安定が挙げられます。
年間を通じて、一定の売上を確保することができますから、これは大きなメリットです。
 
一方で、運送を申し込むお客様側には、どんなメリットがあるのでしょうか?
 
実は、貸切バスの年間契約では、契約した運行日数(実際にお金を支払う日数)の1.4倍の日数運行してよい、ということになっています。
つまり、1÷1.4≒0.72ですから、約3割お得ということになります。
 
バス会社は年間の安定した運行が約束され、お客様は最大3割弱の割引が受けられる。
これが貸切バスの年間契約の意味です。

 

運送引受書とは?

運送引受書というのは、貸切バス会社とお客様との間で交わされる一種の契約書です。
運送約款が不特定多数の広範な範囲のお客様との包括的な契約とすると、運送引受書は、特定のお客様との個別契約ということになります。

運送引受書は、基本的に運行の度ごとに発行する必要があります。
個別の契約書ですから当然ですね。
運送引受書の記載事項は多岐にわたります。
実際、私も記入してみたことがありますが、なかなかのボリュームです。

 

毎日書くのは大変です

年間契約が活躍する舞台として、送迎バスがあります。
駅から工場までの送迎を行う企業送迎や、各種学校への送迎を行う学校送迎、介護施設へ利用者を送り迎えする施設送迎などです。
 
送迎バスは、年間で200日を超えるような運送を予定することが多い運送形態です。

毎日、同じようなルート、同じような時間帯で運行するのが、送迎バスです。
当然のことですが、このような運行では、運行引受書の記載事項も、毎日毎日同じような内容が繰り返し記入されることになります。
 
そこで、この記事の本題です。
このような運行形態の年間契約でも、運送引受書は毎回発行する必要があるのでしょうか?

 

必要事項が網羅されていればいい

結論から申し上げますと、必要ありません。
しかし、それには条件があります。

運送引受書のルールについて、運輸局から出された文書の中に、以下のようなものがあります。
 
問:期間契約や年間契約による運行の場合、運行する日毎に「運送引受書」の交付は必要になりますか。?
 
答:例えば、基本契約書と個別の運送に係る確認書面を組み合わせるなど、複数の書面により運行単位毎に全ての記載事項を網羅できれば、運行する日毎に「運送引受書」を交付する必要はありません。

 

つまり、基本契約書と運送仕様書など、複数の書類を組み合わせることによって、日々の運送契約の内容が明らかになるのであれば、『運送引受書という形だけにこだわる必要はないよ』ということです。
 
基本契約書の中には、申込者や契約責任者の名前も入っているでしょうし、契約車両の大きさ、台数、発地や着地などは運送仕様書で明らかにしておけばいいでしょう。
運送引受書に記載すべき、とされている内容を漏れなく網羅できるように工夫すれば、毎回運送引受書を作成する必要はないということです。

 

指導員によって対応が異なる

結論的には上記のとおりですが、適正化センターの巡回指導では少し事情が異なります。
年間契約における運送引受書の発行について、一部の指導員は運輸局と異なる見解を出すようです。
事実、過去に千葉県の方では、運送引受書の省略は厳禁という指導もあったようです。

しかし、前述のように、国土交通省の見解として、基本契約書と個別の運送に係る確認書面を組み合わせるなど、複数の書面により運行単位毎に全ての記載事項を網羅できれば、運行する日毎に「運送引受書」を交付する必要はありません、と発表されているのですから、各指導員の見解に相違がでるのは間違いです。
 
もしも、巡回指導の折などに、このような指導をされた場合は、当社に情報提供をお願いします。

 

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】