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貸切バス ドライブレコーダーは録画可能時間に注意が必要

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実務全般

来月(令和元年12月)から、ドライブレコーダーの装着が義務化されます。(一般貸切)
ドライブレコーダーの選定にあたっては、当社にも多くの事業者さんから相談が寄せられていますが、その中で最近注意が必要だと感じた実例を含めてまとめておきます。

基本性能はどの製品も問題ない

現在発売されているドライブレコーダーであれば、基本的な性能には問題がないはずです。
基本的な性能というのは、以下のようなものです。

☑映る範囲
【前方カメラ】
正面は100度の画角が必要です。
上下は70度の画角が必要です。
【運転席側カメラ】
以下の様子が読み取れる画角
・運転手の挙動(状態)
・変速機の状態(ギア)
・ハンドルの操作状態
 
☑解像度
法令で求められているのは、640×480以上、30万画素以上です。
 
☑フレームレート
法令で前方カメラに求められているフレームレートは10fpsです。
10fpsとは、1秒間に10コマの画像を並べて映像にする、という意味です。
 
☑瞬間速度
法令で定められた基準は、時速40㎞で走行時に±3km/h、時速100㎞で走行時に±4.5km/h以内の誤差です。
 
☑その他記録が必要な事項
・加速度(3次元)
・日時と時刻
・音声

 
色々な条件がある中で、唯一注意の必要な項目があります。

☑録画可能時間
24時間以上が条件
 
↑今回はこの録画可能時間を解説いたします。

 

 

トリガー値の設定が大事

ヒヤリハット映像を記録するためには、機器が『その危険な瞬間を危険だと認識』しなければなりません。
そのために必要なのが、加速度センサー(Gセンサー)です。

【前後方のG】
急発進や急ブレーキを判別するために利用されます。
 
【左右のG】
急ハンドルを判別するために利用されます。
 
【上下のG】
車体が上下するような操作を判別します。
 
どの程度の加速度で記録が開始されるかどうかは、トリガー値の設定を変えることで変化させることができます。
トリガー値を大きく設定すると、小さなイベント(段差ではねる)などは拾わなくなりますが、あまり大きくしていまうと、肝心のヒヤリハット事象を拾わなくなる可能性もあります。
メリットとしては、細かいイベントを拾わないので記録容量を節約することができます。
逆に小さくしすぎると、加速度センサーが拾う細かいイベントを多く記録してしまい、記録媒体に大きな負担がかかってしまいます。
※トリガーとは『拳銃の引き金』などを意味する言葉で、映像記録のきっかけのことを指しています。

 

映像データはとても重たい

ドライブレコーダーの映像は少なくとも24時間記録できなければなりません。
しかし、記録媒体であるSDカードには容量というものがあり、無制限に記録できるわけではありません。
前項でトリガー値の説明をしたのは、この数値の設定が記憶容量に大きく関わりがあるからです。

ドライブレコーダーの記録媒体であるSDカードに記録されるのは、主に映像データと音声データです。
時間情報や地点情報などのサブ的な情報も記録されますが、データ量として圧倒的に多いのは映像データです。
 
【映像データが増える要因】
①記録された動画の解像度が高い。
⇒鮮明な画像であればあるほどデータ量が大
 
②録画回数(時間)が長い
⇒単純に記録時間や回数が多ければデータ量が大
 
③録画する範囲が広い
全天球型は一般的にデータが多め

 

ドラレコ映像データはどんどん巨大化している

あるメーカーさんの全天球型ドライブレコーダーの記録時間を見てみます。
現在のドライブレコーダーの単位時間のデータ量の大きさがわかります。

【全天球型】
※記録用SDカード 32GB
録画コマ数(フレームレート)
30コマ/秒  240分
15コマ/秒  480分
10コマ/秒  720分(ここが規定の最低値)

 
仮に基準の最低値であるフレームレート10fps(1秒間に10コマの動画)としても、32GBのSDカードでは、12時間しか録画できません。
つまり、貸切バスのドライブレコーダーとしてこの機種を装着する場合、最低でも64GBのSDカードが必要ということになります。
 

SDカードを増やせば理論上は対応できても、すぐに安心はできません。
なぜならドライブレコーダーには、その機種が装着できる限界の容量というものがあり、購入しようと考えているドライブレコーダーが何GBまで記憶媒体を装着できるのかの確認も必要です。

 

イベント記録データも圧迫の原因

ドライブレコーダーの録画時間に影響をあたえるのは通常の走行データだけではありません。
むしろイベント記録が記録媒体に常駐することで、結果として録画時間が少なくなってしまうケースが多くあります。

前の方で、『トリガー値を大きく設定すると小さなイベントを拾わないので記憶容量の節約になる』と書きました。
一方、トリガー値を小さくすると様々なイベントを漏れなく拾うことができますが、その分記憶領域を圧迫するので通常の録画時間は短くなってしまいます。
 
この問題の解決としては、上書きされない記録となるイベント記録はできるだけ速やかにドライブレコーダーのSDカードから抜きだすことが必要です。

 

事故以外の記録も大切になってきた

ドライブレコーダーに記録された映像が一番威力を発揮するのは、事故が発生したときです。
しかし、ドライブレコーダー映像の有効な活用を考えると、事故以外の場面での記録もとても大切です。

【ドライブレコーダーを利用した教育】
①本人がヒヤリハットの当事者である映像
 
②第三者的に記録されたヒヤリハット映像
 
③当事者としての事故映像
 
④第三者的な事故映像
 
⑤苦情があったときの映像

 
上記の例で、もしSDカードに12時間しか映像が記録できないとします。
お客様からの苦情が午前10時に入ったとして、そのバスが深夜11時に帰庫したとしたら、『苦情があったときの映像』は残っていないことになります。
 

記録容量は自分で確かめる!!

これからドライブレコーダーの購入を検討されている事業者さんは、ぜひ録画時間も検討材料のひとつに加える必要があります。
『うちのドライブレコーダーは32GBで24時間大丈夫ですよ!』という営業さんのセールストークを鵜呑みにしないで、自分で機器の仕様を確かめるようにして下さい。

24時間録画できても、動きがカクカクした映像では教育には使用できません。
動きの滑らかさはフレームレートに依存しています。
 
youtubeなどの動画サイトで『フレームレート 比較』と入れてみましょう。
同じ映像をいろいろなフレームレートで再生したものが比較できます。
私の感覚では、教育に使用するには最低20fpsは必要だと思います。

 

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】