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【旅客】【貨物】運行管理者の講習義務について詳しく解説します

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法律や規則に関すること

運行管理者が講習を受ける時期は3種類

運行管理者は一定の場合に、運行管理者向けに用意された講習を受ける必要があります。
ポイントは3つです。

運行管理者が講習を受ける時期
①死者若しくは重傷者が生じた事故、又は行政処分に相当する違反を起こした営業所に所属する運行管理者
 
②運行管理者として新たに選任された場合
 
③最後に講習を受講した日の属する年度の翌年度の末日を経過した運行管理者

 

根拠法令はこちら
★貨物は貨物自動車運送事業運輸規則第23条
(運行管理者の講習)
第二十三条 一般貨物自動車運送事業者等は、国土交通大臣が告示で定めるところにより、次に掲げる運行管理者に国土交通大臣が告示で定める講習であって次項において準用する第十二条の二及び第十二条の三の規定により国土交通大臣の認定を受けたものを受けさせなければならない。
一 死者若しくは重傷者(自動車損害賠償保障法施行令第五条第二号又は第三号に掲げる傷害を受けた者をいう。)が生じた事故を引き起こした事業用自動車の運行を管理する営業所又は法第三十三条(法第三十五条第六項において準用する場合を含む。)の規定による処分(輸送の安全に係るものに限る。)の原因となった違反行為が行われた営業所において選任している者
二 運行管理者として新たに選任した者
三 最後に国土交通大臣が認定する講習を受講した日の属する年度の翌年度の末日を経過した者

 
★旅客は旅客自動車運送事業運輸規則第48条の4
内容は上記と同じなので割愛します。

 
では、この3点について、少しだけ詳しく解説しましょう。

事故や行政処分を起こした営業所に所属する運行管理者

一番理解がむずかしい(レアケースなので)事例かもしれません。
私も今回勉強したことがあります。

■死者若しくは重傷者が生じた事故を引き起こした事業用自動車の運行を管理する営業所の運行管理者
この場合の死者や重傷者は、運行に関連する事故に関連するものです。
もちろん、乗客の転倒などの車内事故も含まれます。
 
重傷者の定義に迷うところですが、こちらは自動車損害賠償保障法施行令第5条の2、3項に明記されています。

 

★自動車損害賠償保障法施行令第5条
第2項
イ 脊せき柱の骨折で脊せき髄を損傷したと認められる症状を有するもの
ロ 上腕又は前腕の骨折で合併症を有するもの
ハ 大腿たい又は下腿たいの骨折
ニ 内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの
ホ 十四日以上病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が三十日以上のもの
第3項
イ 脊せき柱の骨折
ロ 上腕又は前腕の骨折
ハ 内臓の破裂
ニ 病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が三十日以上のもの
ホ 十四日以上病院に入院することを要する傷害

 
骨折は単純骨折や開放骨折だけを指すわけではありません。
『前腕部の捻挫だと思っていたら、実は剥離骨折だった』という実例もあるようですので、注意が必要です。

 

大きな事故や違反をしてしまった営業所の運行管理者には、所管する行政庁から講習受講命令が送られてきます。
 
通知を受けた事業者(会社)は、名指しされた運行管理者に、1年(やむを得ない場合は1年6ヶ月)以内の期限で一般講習を受けさせなければなりません。
 
そして、この運行管理者については、次の年度にも講習を受ける義務が生じます。

 

元々、運行管理者の講習は毎年受けることが義務付けられていました。
しかし、平成13年にこの義務が一部緩和され2年に一度になったわけですが、上記のように問題を起こしてしまうと、昔のルールの通りに、2年連続で受講しなければならなくなります。

 

事故や違反が起きた当時の運行管理者が退職してしまった場合は?
特別監査などの入った場合、行政処分の結果がでるまでには、それなり(3ヶ月から半年くらい)の時間がかかります。
それくらいの時間が経過したら、事故や違反があった当時責任ある運行管理者の立場に会った者が、退職したり、別の会社に転職したりすることもあるでしょう。
その場合、この運行管理者には職を離れても講習の受講義務は残るのでしょうか?
 
結論から申し上げますと、個別の運行管理者に義務は残りません。
理由は大変明確です。
運輸規則の本文を読んでみましょう。

 

★貨物は貨物自動車運送事業運輸規則第23条
(運行管理者の講習)
第二十三条 一般貨物自動車運送事業者等は、国土交通大臣が告示で定めるところにより、次に掲げる運行管理者に国土交通大臣が告示で定める講習であって次項において準用する第十二条の二及び第十二条の三の規定により国土交通大臣の認定を受けたものを受けさせなければならない。

 

この文を読んでみると、講習を受け(させ)る義務があるのは事業者(会社)であって、運行管理者本人ではないことがわかります。
 
つまり、事業者(会社)から職を離れた運行管理者に、むりやり講習を受講させることはできない、ということです。

運行管理者として新たに選任された者

この点については、以前に書きました。
再度、ご説明しておきます。

運行管理者の講習は2年に一度受けることになっています。
この場合の年度は、国の会計年度が基本になります。
つまり、4月にスタートして、3月に終了します。
 
新たに選任された運行管理者は同年度内に講習を受ける義務があります。
つまり、ある年度に選任された運行管理者は、同じ年度の3月末までに一度講習を受けなければなりません。
 
但し、3月30日にやむを得ない事情があって、運行管理者を至急選任する必要が発生した場合など、どう考えても年度内の講習受講が不可能な場合は、なるべく早い段階で解決すればいいことになっています。

 

 

最後に講習を受講した日の属する年度の翌年度の末日を経過した運行管理者

こちらはもうおわかりですね。


 
2年に一度という表現は、正確には2年度に一度ということです。
つまり上の図のように、2021年4月5日一般講習を受けた運行管理者が次に講習を受ける期限は、2023年4月5日ではなく、2024年3月31日ということになります。
 
一見するとほぼ3年になるので少し得をしたようですが、次は2025年3月31日が期限になりますので、長い目で見るとあまり変わりません。

 

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】