そもそも車には何人乗っていい?
車の乗車定員は車検証を見ればわかります。
一般的な乗用車の場合は5人であることが多いのですが、この5人は『大人5人』を意味しています。
では、大人より体の小さい子供はどう考えればいいのでしょうか?
第53条
2 前項の乗車定員は、十二歳以上の者の数をもつて表すものとする。この場合において、十二歳以上の者一人は、十二歳未満の小児又は幼児一・五人に相当するものとする。
12歳以上が大人で、12歳未満は子供と考えるわけです。
そして『大人2人=子供3人』と考えていいということです。
例えば、5名定員の乗用車なら3名の大人と3名の子供が乗車できるのですね。
シートベルトが足りない・・・
一般に5名定員の乗用車には、5名分のシートベルトしかついていません。
先ほどお話しした、『大人3人・子供3人』のケースで、子供にもルール通りにシートベルトをつけさせるとすると、『シートベルトが1つ足りない』ことになります。
結論から言うと、このような場合はシートベルト着用の義務は発生しません。
根拠法令は次のとおりです。
第二十六条の三の二の2
法第七十一条の三第二項ただし書の政令で定めるやむを得ない理由があるときは、次に掲げるとおりとする。
一 運転者席以外の座席の数を超える数の者を乗車させるためこれらの者のうちに座席ベルトを装着させることができない者がある場合において、当該座席ベルトを装着させることができない者を運転者席以外の乗車装置(運転者席の横の乗車装置を除く。)に乗車させるとき(法第五十七条第一項本文の規定による乗車人員の制限を超えない場合に限る。)。
また、以下の条文の解釈によって、『ないものはない』と抗弁することができます。
第七十一条の三
2 2 自動車の運転者は、座席ベルトを装着しない者を運転者席以外の乗車装置(当該乗車装置につき座席ベルトを備えなければならないこととされているものに限る。以下この項において同じ。)に乗車させて自動車を運転してはならない。ただし、幼児(適切に座席ベルトを装着させるに足りる座高を有するものを除く。以下この項において同じ。)を当該乗車装置に乗車させるとき、疾病のため座席ベルトを装着させることが療養上適当でない者を当該乗車装置に乗車させるとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
後半の『幼児』の部分については、現在チャイルドシートの義務化でカバーされています。
しかし、オールドカーなど、シートベルトのない車両については『ないものはない』と言える状況に変わりありません。
園児バスはどんな状況なのか
幼稚園や保育園の子供たちを送迎するための園児バスにはシートベルトが装備されていません。
一番保護しなければならない対象である園児たちになぜシートベルトをさせないのでしょうか?
その理由は以下のとおりです。
2.保護する側(保育士さんなど)の負担が大きい。
※シートベルトは適切に着装しないとかえって危険。
※体格差の大きい子供ひとりひとりの調整を数人の保育士さんが行うのは事実上不可能。
3.車両の横転、火災の際に脱出の遅れにつながる。
※幼児はシートベルトを自分で外すことができない。
『一人で着けて、ひとりで外す』ことができないのが最大の問題であることがわかりました。
園児に大人用シートベルトはかえって危険!
貸切バスをチャーターして遠足に出かける場合、シートベルト問題はどう考えればいいのでしょうか?
国土交通省に直接問い合わせた結果です。
A.幼児の場合はシートベルトを装着することがかえって危険につながる場合もある。
よって、義務ではなく、また安全性を確認しないで装着することも薦めていない。
Q.それは2人席に幼児3名を乗せた場合も同じですか?
A.同じです。
Q.高速道路でも着装させなくていいの?
A.義務ではありません。ただ、シートベルトのない状態で高速道路を走行するのは大変危険なので、できれば高速道路を使用しないルートの選択をお願いしています。
また、やむを得ず使用しなければならない場合は、第一車線を安全な速度で走行してください。
車外に掘りだされる危険などを考えると、シートベルトは着用したいところなのですが、幼児の場合はなかなか難しい問題を抱えていることがわかりました。
特に驚きだったのは、幼児の場合はシートベルトを装着することが危険と認識されていることです。
園児バスの運転手さんは頑張っている!
園児バスの運転手さんが、幼児たちの安全を第一に考えて運転されていることは、データでも証明されています。
また、一般車両の事故が速度域70㎞から80㎞であるのに対し、園児バスは40㎞程度と低速域での事故が多くなっています。
【国土交通省のホームページより】
幼児専用車の車両安全性向上のためのガイドライン
日ごろ、子供たちの命を守っている園児バスの運転手さんに頭が下がります。
最後に
幼児用のシートベルトのむずかしさはジェットコースターでの工夫を考えてもわかります。
ジェットコースターでは装着の手間を考えてアーム型の安全バーが下りてきますが、これも万能ではなく、隙間ができて死亡事故になるケースも出ています。
シートバック(シートの背もたれ)を高くして、さらに背面にスポンジを入れるなどして、万が一の場合に幼児の衝突被害を軽減する工夫はされているようです。
しかし、高速道路を利用した遠足などの場合を考えると、やはり幼児用のシートベルトの開発が待たれます。