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【旅客】【貨物】運送約款の意味を理解しておきましょう

2021年07月11日11時06分

この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。

今回は、『理由はわからないけど、なんとなく営業所の壁に何年も変わらず貼ってある』あの汚い張り紙について勉強しておきます。

約款とはなにか

旅客にしても貨物にしても、いわゆる自動車運送事業と約款は、切っても切れない関係にあります。
まず約款とは何か、から知っておきましょう。

約款とは、仕事を依頼される側と依頼する側の約束ごとを定めた、『合意内容』のことです。
 
約款はいろいろな業界で利用されており、以下のような種類があります。
・運送約款
・保険約款
・工事請負約款
・旅行業約款

 

平成29年に民法で規定された

約款は商習慣として定型化されていましたが、つい最近まで明確な法的保護はありませんでした。
しかし、現代の大量定型取引の法的安定性を確保するため、平成29年の民放大改正で、ようやく定型約款が定義されました。

約款が定義されているのは、民法第548条の2(定型約款の合意)です。
あまり読みたくない文章ですが、一応記載しておきます。
体質的に問題のない方はお読みください。(私は体が受けつけませんが・・・)
 
第五百四十八条の二 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
2 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。

 

約款はだれのため?

それでは、約款は何のためにあるのでしょうか?
もしも標準約款が存在しなかったとしたら、どんなことが起こるでしょうか?

あなたが、近所のショッピングセンターに入っている保険会社に行って、新しく生命保険の契約する姿を想像してみてください。
 
もしも約款が存在しなかったとしたら、私たちは保険会社と契約する際に、膨大な量の契約文書を一文一文チェックする必要があります。
なぜなら、契約文書の中に、保険会社にとって一方的に有利、私たちユーザーにすごく不利な契約内容が含まれている可能性があるからです。
 
私たちの社会は、契約自由の原則というものに守られています。
 
契約自由の原則とは、人が社会生活を営むに際し結ぶ契約は、公の秩序や強行法規に反しない限り、当事者が自由に締結できるという民法上の基本原則のことです。
つまり、保険会社から生命保険のプランを購入するに際して、よほどとんでもない条件でなければ自由に契約することができる、ということです。

 

約款は超常識的文書

保険や旅行、工事の契約のたびに、細かい契約文書を隅々までチェックしなければならないとしたら、これは社会全体から見ても大きな損失になります。
この損失を少しでも小さくするためにあるのが、各種の約款です。

ぶっちゃけた話、約款は読まなくても契約双方に不都合が生じないような内容をまとめた超常識的契約文書です。
ですから、それぞれの会社が作成した約款については、各関係省庁の認可(承認)が必要になります。
担当のお役人がしっかりと読み込んで問題がないかどうか確認するわけですね。
 
しかし、100社の保険会社や1000社の旅行会社、10000社の建設会社から、それぞれ独自の約款が提出されたとしたら、審査するお役所はたまったもんじゃないですよね。
 
そこで、この内容であれば、審査がなくても認めますよ的な契約文書を役所が作って各業界に頒布することにしました。
これがそれぞれの業界で利用される標準約款です。

 

約款は読む必要なし??

運送業界にも、貨物、旅客の標準運送約款が存在します。
標準運送約款は、運送を引き受ける側と依頼する側にとって、極めて標準的な契約内容が網羅的に記載されています。

通常、約款は読む必要がありません。
読む必要がないように作られているからです。
(実際、アリでも読めないような大きさの文字で書かれています)
 
もしも、各業界の標準約款に書かれている内容を変更したい場合は、改めて関係省庁の認可を受ける必要があります。
 
消費者側に有利になるような内容であれば、特に問題なく認可になるはずです。
逆に、消費者に不利益な内容はまず通らないでしょう。

なぜなら『読む必要がない』ように作られているのですから、読む側(=消費者側)に不利な内容になっては意味がなくなるからです。

 

運送会社と荷主(旅客)との契約は、運送約款+引受書で完成します。
運送約款が掲示されていない会社というのは、契約について法的な争いになった場合、厳密には裁判で負ける可能性がある、と思ってください。
 
営業所の壁に貼られたあの薄汚れた運送約款。
実は大切な契約書だったんですよ。
 

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】

 

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