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【貸切バス】【貨物】事業報告書を正確に作りましょう

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実務全般について

事業報告書と輸送実績報告書の区別わかっています?

事業用自動車の事業者には、定例の報告義務があります。
それも年に2回です。

一つ輸送実績報告書、そしてもう一つが事業報告書です。
そして、よく役員法令試験のひっかけ問題としても登場するのが、この両報告書の提出時期です。
 
▶輸送実績報告書 毎年度5月31日までに提出
※対象期間は前年4月1日から本年3月31日までです。
 
▶事業報告書 毎事業年度終了後100日以内に提出
※この事業年度は、事業者によって異なります。

 

更新の資料としてはどちらも大事

事業用自動車運送事業の中で、唯一更新制度があるのが、一般貸切です。
実は5年に1度の貸切更新審査において、上記2つの報告書はとても重要な意味を持っています。

① 更新から5年間は前年度の営業収入を超えられない
更新申請では、今回の更新から次回の更新までの安全投資計画を立案します。
その際に、先立つモノとしてお金が必要ですが、この額は基本として『直近年度の輸送実績報告書の営業収入の数字』を超えることはできません。
 
② 更新前5年間の財務状況は事業報告書をベースに作成します。
更新の際には、更新の時から5年間の財務状況を遡って提出します。
その際に必要なのは、『一般貸切の財務』と『それ以外』ですので、一つの財務諸表の中からこの二つが明確に分かれている必要があります。
つまり、会社全体の財務諸表は更新には役に立たず、必要なのは支局に提出した事業報告書、ということになります。

 

 

割といい加減に作ってますね・・・

私たちがお客様から更新をお願いされたときに、一番心配なのが、事業報告書の精度です。
と言いますのも、事業報告書に間違いがあると、会社全体の財務諸表との付け合わせが必要になり、さらには、その会社に関与されている税理士さんへの聞き取りも必要になるからです。

どうも事業報告書というシステムはあまりちゃんと機能していないようで、売上が1桁違ったり、引き算が足し算になっていたりしても、ちゃんと支局の受付印は押されています。
※支局も大変忙しいので、いちいち確認していられないというのが本音だと思います。
 
しかし、先ほども書かせていただいたように、更新申請における『安全投資実績』の基本資料となるのが事業報告書ですので、できるだけ正確に記載していただきたいと思います。

 

 

売上と費用は按分する

一つの会社さんで、貸切と貨物、それに旅行業と人材派遣業をやっている、なんてケースは珍しくありません。
こういう会社さんの場合、貸切と貨物、両方に事業報告書を提出する必要があります。

一つの会社さんですから、財務諸表における売上の数字は一つです。
中にはしっかりと、貸切〇〇,〇〇〇千円、貨物〇〇,〇〇〇千円、旅行業〇〇,〇〇〇千円などと書かれているケースもありますが、このような会社さんでも費用については一つにまとまるのが普通です。
 
貸切の事業報告書を作成するとき、売上や費用がそれぞれ一つにまとまっている場合にどうやってこれらをわけるかというと、これは『按分』しか方法がありません。
『貸切は全体の45パーセント、貨物が30パーセント、旅行業は15パーセント、そして人材派遣業が10パーセント』というような具合です。

 

費用はすべて按分ではおかしい・・・

上記の会社の場合、貸切と貨物の売上を合わせると75パーセントになるので、そういう会社の財務諸表の科目はおおむね想像がつきます。
燃料費のほとんどは事業用自動車のものでしょうし、減価償却費だっておおむね事業用自動車に対するものでしょう。

売上の下に売上原価の項目があり、その中で修繕費やリース料、減価償却費が計上されているようなケースはいいのですが、関与する税理士さんによっては、売上原価の計上がまったくなく、費用のすべてが販管費にまとめられているケースが少なくありません。
そうなると、4つの事業に係る経費がすべて一本でまとまってしまっているので、上で述べたような『按分』でしか費用を分ける方法がありません。
 
通常、費用を按分する際には、売上の比率で按分します。
上記の例で考えてみましょう。
燃料費が5,000千円だったとしたら、貸切は45パーセントの2,250千円、貨物が同様に計算して1,500千円、そして旅行業と人材派遣業がそれぞれ750千円、500千円となります。
 
しかし、それでいいのでしょうか?
旅行業と人材派遣業の費用として、燃料費を事業用自動車運送事業と同様に評価していいのでしょうか?
 
結論から申しますと、ここはちゃんと補正を掛けるべきだと思います。
貸切は貨物と合わせた75パーセントの中の45パーセント、つまり6割を負担し、貨物が残りの4割を負担する。
これが正しい割り付けの方法だと思います。

 

当社のサポート先はすべて当社で作成します

当社に更新申請を依頼してくださったサポート先様については、事業報告書については次の更新まで当社で作成させていただきます。
サポート先の経理担当者には、会社さんの行っている事業の種類と売上比率を教えていただくだけで結構です。
 
それだけの情報がいただければ、当社で上記のような費用補正も施した上で、5年後を見据えた正確な事業報告書を作成させていただきます。
 

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】