どんな会社であっても、従業員を完全にコントロールすることはできません。
比率を図ったことはありませんが、複数の従業員がいれば、必ず一定の割合でエラー分子が存在します。
大切なことは、エラー分子をゼロにすることではなく、いるのが普通と考えてあらかじめ対策を練ることです。
それが危機管理というものです。
ヒューマンエラーは必ず発生する
ヒューマンエラーと聞くと、うっかりミスを想像される方が少なくありません。
ヒヤリハットに代表されるようなミスのことですね。
このような行動のことを『意図した行動』と呼んでいます。
『意図した行動』の代表には、『手抜き』や『故意』が、『意図しない行動』には、『スキル不足』や『思い違い』などが挙げられます。
ヒューマンエラーの解決には、いずれの場合も、『原因を深掘り』して、再発の防止を考える必要があります。
まずは説明と謝罪だけでいい
従業員がNG行動をとってしまったとき、まず経営トップが行わなければならないのが、事故対応です。
NG行動によって人命にかかわるような事態が生じたときは、特に早急な対応が求められます。
次に再発防止策を策定して、必要であれば公表します。
大切なことは、『このタイミングでは謝罪だけでいい』ということです。
再発防止策は、社内全体の意見を取り入れて実施するべきものですから、謝罪のタイミングで発表する必要はありません。
ただし、常識的に考えて誰でも納得するような再発防止策であれば、素早い対応は消費者への良いアピールになる可能性もありますので否定しません。
ここからは経験談を少し・・・
ここからは、私の経験談をネタにしてお話しします。
運転手からのたたき上げ、50人くらいの会社でしたが、いわゆる現場の親分です。
あまり現場に出てこない経営トップの直下で、営業面でも業務面でも文句の言える部下が一人もいない状態です。
おまけに、その事実を隠したまま数日が経過したため、次の回収日(3日後)まで対応ができないという事態です。
その事実を知って、すぐに鍵の業者へのシリンダー交換の依頼、警備会社へシリンダー交換までの臨時警備の依頼などの対策を進めました。
上記の対応が完了した確認が取れた段階で、今度はドライバーをつれて洋品店に状況説明と謝罪をしました。
無理な改善対策
この事例、事故対策から謝罪までの対応が終ったので、次に考えなければならないのは再発防止策です。
再発防止対策はスピード感が大切だと信じ、謝罪の翌日から実施を命令しました。
その当時、施錠が必要な回収先は、ドライバー1人あたり10ヶ所程度あり、塵芥車は10台以上運行していましたから、無線連絡からのチェック作業が大爆発してしまったのです。
トップダウンのメリットとデメリット
経営トップが主導となって行う指示、つまりトップダウンにはメリットとデメリットがあります。
メリットの代表は、素早い指示が出せること、実現可能性が高いことでしょう。
事例でも、
①鍵の業者へのシリンダー交換の依頼
②警備会社へシリンダー交換までの臨時警備の依頼
までの対策については、防犯上の観点からも、謝罪の前に素早く進める必要がありました。
ここまではトップダウンのメリットが生きた事例です。
でも、問題はこの後です。
対策はボトムアップで進める
事例では、トップダウンで進めた再発防止策は大失敗に終わりました。
実は、謝罪以降の再発防止策の策定は、トップダウンではなく、ボトムアップ(いわゆる下意上達)で進めた方が良い結果が出ます。
つまり、実際に関わる従業員の意見をしっかり聞かなければ、事例のように継続できない改善策になってしまう可能性があるのです。
再発防止策に必要なのは、
①有効な対策であること
②継続できること
です。
トップダウンで再発防止策を考えると、①の有効性には問題のないことが多いのですが、②の継続性に問題のあることが多くなります。
要は、現場を知らないトップが無理を言うので、理屈は合っていても続けられないということです。
もちろん、再発防止策にもトップダウンは必要です。
ボトムアップを『従業員主導の意見交換』と勘違いして、改善策の策定から実施まで、全部従業員任せにする経営トップがいますが、これは大間違いです。
再発防止策は、従業員に今まで以上の負担を強いる内容を含むことがあります。
実施にあたって、トップダウンがなければそれこそ有効性が保てません。
反論できない風土が一番怖い
事例では、当時の私に異論を言える人が誰もいなかったことが最大の問題でした。
前述のとおり、エラー直後の対策については、トップダウンで素早く適切に実行する必要があります。
しかし、スピード感が求められるのはその後の謝罪までです。
もちろん、再発防止策も早いに越したことはないのですが、むしろ大切なのは中身、実効性と継続性です。
従業員のエラー対策として、BCPの活用をお勧めしています。
運輸安全マネジメントと連動して、適切な事業の継続計画を策定してみませんか?