貸切バスの巡回指導とは?
事業用自動車運送事業を営んでいると、巡回指導の連絡を受けることがあると思います。
貨物自動車の分野では2年に一度の巡回指導は昔から行われており、指導を受ける側の事業者さんもある程度慣れているようです。
しかし、旅客運送事業についてはこれまで巡回指導という制度そのものがなかったため、前述の実施連絡(予告)を受けると必要以上に戸惑ってしまうケースが多く見受けられます。
巡回指導を担当するのは専門機関
昨年から巡回指導の対象となっているのは『一般貸切旅客自動車運送事業』、つまり貸切バス事業です。
実施するのは、全国の各運輸局の管轄区域にそれぞれ1ヶ所設けられている『一般貸切旅客自動車運送適正化機関』と名付けられた団体です。
この巡回指導に係る費用については、各事業者が負担するしくみになっており、毎年決まった時期になると以下のような請求書が届くはずです。
▶営業所負担金(1ヶ所あたり)・・・・・60,270円
▶自動車負担金(1両あたり) ・・・・・8,970円
※各地域のバス協会に加入している事業者さんはいろいろ理由があって無料
巡回指導を2年に1回で済ませるには?
巡回指導は原則として年1回行われることになっています。
しかしこの原則には例外があり、以下のような場合が想定されています。
国土交通省が公表している資料によると、巡回指導の対象になる事業者は以下のように選別しているようです。
▶地方運輸局の監査対象事業者になっていない事業者
(その年度の予定に入っていない、という意味)
▶地方運輸局と協議した結果、優先的に巡回指導をすべきと判断された事業者
☑1回目の巡回指導の結果、貸切バス安全性評価認定や運輸安全マネジメントの実施状態を総合的に勘案して、優良事業者だと認められる場合
(巡回指導の回数が、最大で2年に1度に軽減)
つまり、巡回指導が来るということは、その年度に一般監査が入る可能性は低いことになります。
※あくまでも予定に入っていないだけなので、巡回指導の結果や労基等からの通報によるトントン監査の可能性はあります。
巡回指導と一般監査の関連性については、よくわかっていません。いろいろな事業者さんのお話をお聞きしますが、巡回指導のお知らせが来てからすぐに一般監査が入ったなど、の例もあります。
どこをチェックされるの?
巡回指導は基本的に2名一組の体制で、事業者の営業所を訪問する形で行われます。
チェック項目はあらかじめ決まっているようですが、一般監査等で違反を指摘された部分については情報共有されているので、少し厳しくチェックされるようです。
1.正当な理由なく、巡回指導を拒否した場合
2.運行管理者がゼロ
3.運転者が全員健康診断を受けていない
4.教育がまったくされていない
5.整備管理者がゼロで、車両の点検整備もされていない
チェックについては、すべて『適』『否』で判断され『否』については原則として30日以内に改善状況を報告するように義務付けされています。
ロケバス事業者には甘い?
観光バスだけでなく、ロケバス事業者も一般貸切旅客自動車運送事業に属する場合があります。
一般的には観光バスよりも車両自体が小さく、規模も小さい方が多いようです。
理由はいろいろ考えられます。(想像)
☑車両の台数が少ないので、時間が短い
☑乗務員の入れ替わりが(観光に比べ)少ないので、チェックが早い
☑ロケバスの業務がよくわからない
☑ロケバス独特の事務所の雰囲気が苦手(ちょっとしたバーの雰囲気)
☑ロケバスの人はなんとなく怖い
観光の場合、午前中で終わることはほぼありませんが、ロケバスの場合は午前中で帰ってしまうことも少なくありません。
セーフティバスは無意味??
まず原則論として、貸切バス安全性評価認定(セーフティバス)で★を獲得していても巡回指導は入ります。
少なくとも1回目は入る、と考えてください。
では、セーフティバスは巡回指導、一般監査対策としては無意味か?というとそうでもありません。
☑セイフティの認定を受けている事業者が巡回指導を受ける場合、セーフティの審査で優良と評価された部分の点検を省略されることがあります。
巡回指導はテストだと思って有効利用しましょう
巡回指導の結果はA~Eの5段階に分けて評価されます。
今はまだ始まっていませんが、今後この評価は毎年公表することも検討されているようです。
東京オリンピック後の不況は間違いなくやってきます。
その時をビジネスチャンスと考えるか、ピンチと考えてしまうかは日ごろの準備にかかっています。
業界縮小、国内不況の中で残存者利益を得るためにも、セーフティバスへの取り組み、巡回指導評価の公表制度への準備など、一般消費者から見たときの評価を高める工夫をしておきましょう。