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【旅客】【貨物】巡回指導の上手な活用方法

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一般貨物

バスやトラック、タクシーの運行を仕事にしている事業者さんが、『費用を負担しているにもかかわらず、できれば来てほしくない』と思っているサービス(?)に巡回指導があります。

巡回指導はどこから来る?

トラックの場合は、国土交通省が全国のトラック協会を適正化事業実施機関として指定したので、基本的にトラック協会の方がきます。

バスの場合は、平成28年1月15日に長野県で発生したスキーバスの事故をきっかけにして設立された、財団や社団法人がベースとなって実施されています。
 
★巡回指導の根拠法令
道路運送法 第43条の2
国土交通大臣は(中略)旅客自動車運送に関する秩序の確立に資することを目的とする一般社団法人又は一般財団法人であって、次条に規定する事業を適正かつ確実に行うことができると認められるものとして国土交通省令で定めるものを、その申請により、運輸監理部及び運輸支局の管轄区域を勘案して国土交通大臣が定める区域(中略)ごとに、かつ、旅客自動車運送事業の種別(中略)ごとに、旅客自動車運送適正化事業実施機関(以下「適正化機関」という。)として指定することができる。

 

その役割は?

巡回指導と監査は似ているようで、全くその役割が違います。

監査の主体と役割
①監査をする人
運輸支局の監査担当者が行います。
つまり、公務員の方がきます。
 
②その役割
業務が適正に実施されているかどうかを確認して、必要があれば罰則を与えることができます。
 
監査の目的は、少しむずかしい言い回しですが、『事業者が、法令遵守意識の醸成を図るよう努めるようにするため』、とされています。

 
監査には、監査にいたる端緒というものがあります。
端緒というのは、簡単に言えばきっかけのことです。
 
このきっかけには、いろいろな種類があり、ケンカをして辞めた従業員が労働局にチクリ、それが監査の端緒となることもあります。
 
巡回指導で行われる指摘にも、この端緒となるものあるので、指導を甘く考えてはいけません。

巡回指導の主体と役割
①巡回指導をする人
関東なら、公益財団法人関東貸切バス適正化センターの指導員が行います。
 
②その役割
監査の多くは、端緒、つまり、何かのきっかけで実施されますが、巡回指導は定期的に実施されます。
トラックの場合は、おおむね2年に一度、貸切バスの場合は、1年に一度です。
 
その役割は、文字どおり、業務が適正に行われているかどうかをチェックし、必要があれば、指導をすることにあります。

 

どんな準備が必要?

用意しなければならないのは、大量の書類です。
巡回指導は、事前に『●月●日に行う』というお知らせが来ます。

用意すべき書類は、実施日の連絡と一緒にリストが送られてきます。
リストに書かれているものを正直に用意すると、ちょっと引くくらいの量になります。
 
ただ、実際に当日必要な書類はその中のごく一部です。
サポート先のお客様は、巡回指導の日程が決まったら、当社にお知らせください。
関東なら伺いますし、遠隔地の場合は、zoomなどを利用して、何を用意しておけばいいのかアドバイスいたします。

 

巡回指導はすべて正しい?

巡回指導は監査と違い、指摘してくる内容のレベルに大きな差があります。
とても勉強している指導員の方もいらっしゃれば、『おいおい、いつの話だよ・・・』というような古い基準で指導される方もいます。

なぜ、監査と巡回指導で差が出るかというと、単に、『法令を基準にしゃべっているかどうか』の違いです。
 
国交省の監査担当の方というのは、指摘事項と根拠法令を紐づけして話をします。
もちろん、巡回指導の指導員さんの中にも、根拠法令をしっかり勉強してから話をする方はいますが、残念ながら『それは自分の趣味でしょ?』としか思えないような指導をされる方も少なくありません。

 

昔、実際にあった指導の例
■ 学校送迎で、朝と夕方のドライバーが交代した運行についての指摘。
⇒貸切年間契約
■ 巡回指導で、『この運行は下限割れである』と指摘された。
■ この会社では、朝2時間、夕方2時間、点検点呼2時間の6時間で請求していた。
■ しかし、指導員の指摘では、『ドライバーが変更になったので、朝と夕が別運行になった』とのこと。
⇒午前3時間プラス点検点呼2時間、午後も同様で、合計10時間分の請求が必要との発言があった。

 
運行が一運行になるか、二運行になるかは、契約と実際の運行の流れから判断されるものであって、途中でドライバーが変わったら二運行になるものではありません。
そんなことを言いだしたら、交代運転手の必要な運行は、すべて二運行になってしまいますよね。

何もなければそれが一番?

『巡回指導が来たんですが、午前中で終了、何もありませんでした。』
嬉しそうな声で、こんなことを報告してくれる事業者さんがいます。
しかし、本当によろこんでいいのでしょうか?

私は、巡回指導は厳しい方がいいと思っています。
と言うのも、巡回指導で3年連続ほぼゼロ指摘だった地方のバス会社に、労働局通報端緒の監査が入り、100日を超えるペナルティが課せられた実例を知っているからです。
 
先ほども申し上げた通り、巡回指導員のレベルには、個々に大きな差があります。
素晴らしく法令に詳しい方もいれば、全く勉強していない方もいます。
 
よく来る巡回指導員が優しい方の場合には、『ちょっとやばいぞ・・・』と思った方がいいですよ。
単に、見るべきところを見ていないだけかもしれません。

 

巡回指導でモトをとる方法

巡回指導で、自分の趣味を押し付けてくる指導員さんがいます。
ハンコの押し方まで指導してくる方や、『5分以上の休憩があったら電話点呼をした方がいい』などと勧めてくる方もいます。
 
いずれの場合も、『できたら、やった方がいいですよ~』という程度のニュアンスなのですが、言われた方は大変です。

バスやトラックを安全に運行することは、事業者として一番大切に考えなければならないことです。
しかし、バス会社もトラック会社も会社である以上、利益を上げなければ、そもそも経営していくことができません。
利益が上がらなければ、安全に係る投資をすることもできません。

 

バス会社、トラック会社の経営というのは、安全を守るための支出と利益のベストミックスを探すことだと思います。
巡回指導の指導員さんの指摘は大切にしながら、その支出(手間)と利益のバランスを考えて対応するようにします。
 
改善を書面で求められた場合は、法令の根拠があるということなので、この場合は真摯に対応する必要があります。

 
年間10万円以上のお金を支払って巡回指導に来てもらっているのですから、ぜひ巡回指導をうまく利用して、効率的な業務改善をするようにしましょう。

Eラーニングでお教えします

サポート先の皆さまには、来年から始まるEラーニングを利用して、『動画でよくわかる巡回指導』をご覧いただきます。

これまで、メールでお伝えしていた内容も、できるだけ動画で詳しくお伝えできるようにするつもりです。
どうぞお楽しみに。

 

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】