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貸切バス乗務員と乗客の距離感

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実務全般について

今回は、中国地方のお客様(バス運行会社 A社)からのご相談です。
簡単に言うと、企業送迎のドライバーとお客様の距離感の問題です。

送迎先の企業さんからクレームが入った

ある日、バス運行会社のA社に、工場送迎でお世話になっているZ社からクレームの電話が入りました。

Z社は、中国地方に3工場を展開する乗用車関係の中堅部品メーカーです。
クレームの内容は、以下のとおりです。
 
①バスを利用している従業員が、送迎バスのドライバーの行為に不安を感じているので対処して欲しい。
 
②具体的には、ドライバーの連絡先が書かれたカードとクッキーをもらったが、その始末に困っている。
 
③送迎バスは駅から工場まで、夜利用することあるので、ドライバーと二人になる状況が怖い。
 
クレームを言ってきたのは、この工場で働く20代前半の女性、送迎バスのドライバーは、この送迎バスに1年以上乗務している50代前半の男性です。

従業員さん(乗客)の気持ちがうれしくて

この話を聞いたZ社コンプライアンス室の室長がA社を訪問し、ドライバーの意図確認と、再発防止を要請されたそうです。

事情を聞いて驚いたA社の専務は、すぐに問題のドライバーから事情を聴取しました。
ドライバーは大変反省しているようですが、その言い訳は以下のとおりです。
 
①送迎バスを利用するほとんどの乗客(Z社の従業員)が、ドライバ―の声かけ(おはようございます、お疲れ様です、など)に無反応(無視)である中、彼女だけがキチンと受け答えをしてくれた。
 
②とても良い娘さんだと思い、ちょうど旅行先で買ったお菓子が余っていたので、軽い気持ちであげてしまった。
 
③連絡先を伝えたのは、邪な考えからではなく、単に、何か困ったことがあったら手助けをしたいと思ったから、とのこと。

全部間違っている

ドライバ―が答えた3つの理由について、残念ながら、3つとも接客業として間違いを犯しています。

▶彼女だけがキチンと受け答えをしてくれた
単に、彼女の育ちがいいだけの話であって、それを『自分に対する好意』と思ってはいけません。
比較的、男性にありがちな勘違いです。
 
そもそも、20代が50代に興味を持つ確率は極めて低いので、その低い確率を信じ込む感受性があるのなら、それこそ(もっと確率の高い)事故が怖くて家を一歩も出られないはずです。
 
▶軽い気持ちで
これもいただけません。
こちらは軽い気持ちでも、相手がどう受け取るかを考える必要があります。
 
▶何か困ったことがあったら手助けをしたいと思った
よくある話ですが、彼女はそんなことを求めていません。
誰かの役に立ちたいのであれば、ボランティアでもやるべきです。

送迎バスを運行している会社には大問題

この問題を別の会社の笑い話だと思ってはいけません。

高齢になると誰でも自分本位になる
これから、ドライバ―の平均年齢はますます高くなるでしょう。
しかし、送迎されるお客様の年齢は、あまり変わらないでしょうから、今後はこのような問題(セクハラ・モラハラ)が増えることがあっても、減ることはありません。
高齢化すると、(個人差はありますが)自分本位な行動が増えてくる傾向にありますから、同様の問題が皆さんの会社で発生する確率も高くなります。
 
企業送迎、学校送迎、いずれもバス事業者にとってはとても大切な業務です。
乗務員と乗客の距離感の異常問題は、事前に防止しなければなりません。

基本は業務に徹すること

バス乗務員の仕事は、接客業の一面も持っています。
ぜひ、以下の点についてドライバーに確認されることをお薦めします。

☑挨拶はしっかりと事務的にしているか
相手が返してくることを望んではいけません。
また、返事をしてくれたからと言って、喜んではいけません。
あくまでも事務的な挨拶にとどめます。
 
☑乗客には何かあげたり、渡したりしていないか
食べ物などは論外です。
連絡先の交換も厳禁です。
 
☑乗客から何ももらったりしていないか
相手は好意でも、絶対に拒否させてください。
『受け取るとクビになる』と言わせるといいでしょう。

 

近々にバス乗務員のための接客マニュアル(ビデオ・テキスト)を作成します

ここでは書けなかったことも含めて、心理学の知識も入れた接客マニュアルを作成します。
15分くらいのビデオとテキストで、今回のような問題を防止できるように工夫する予定です。
 
フルサポートのお客様は、Eラーニングサイトから、いつでもご覧いただけます。
お楽しみに。
 

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】