トラックやバスを使用して事業を行う場合、必ず必要になるのが車両をとめておくための車庫です。
そして、業務用車庫につきものなのが、前面道路の幅員です。
前面道路の幅員は法令で決まっている
業務用車両の前面道路の幅員(幅のこと)は、車両制限令という法令であらかじめ定められています。
事業用車両の車庫として使いたい土地が『事業用車両の車庫』として認められるかどうかは、その前面道路を目的(駐車目的)の車両が通行できるかどうかにかかっています。
車庫を出入りする車両が車幅1.9mの2トン車なのか、車幅2.49mの大型車なのかによって、そして前面道路の幅によって、事業の許可がされるかどうかに大きな違いが出るということです。
加えてこの表を見ると道路の幅員について私たちが行政と交渉する余地はなく、車庫が認められるかどうかについては幅員証明に書かれた数値のみが判断材料になるように思えます。
望みがあるとすれば・・・
上の図にある、『市街地区域』『市街地区域外』は都市計画法における『市街化区域』『市街化調整区域』と混同される例が多いのですが、まったく違う概念です。
車両制限令における『市街地区域』とは、所管している自治体が決定する区域で、『おおむね市街化している』区域のことをいいます。
目的の車庫が、市街地区域にあるか、市街地区域外にあるかで許可の条件に違いがでてくるので、この区分けで交渉したくなります。
しかし、実際には市街地区域と市街地区域外は各自治体によって明確に線引きされており、ほとんど交渉の余地はありません。
では、どこが交渉の余地あり、なのか。
上の表の中で、若干あいまいな部分、つまり交渉の余地があると考えられるのが、極小指定道路です。
指定されているかどうか
これは私が実際に経験した事例です。
昨年、関東のとある県で一般貨物自動車運送事業の変更許可申請を行いました。
申請の内容は車庫の増設です。
ところが、その車庫の前面道路が極端に狭い。
幅員証明を取ってみたところ、車道は3.2mしかありません。
その車幅なら一方通行でもおかしくないのですが、この場合はそうではありません。
一縷の望みがあるとすれば、その道路が極小指定されていることです。
早速、所管の自治体に問い合わせたところ、最初の回答は『指定されていない』とのこと。
しかし、よくよく話を聞いてみると、実際には『その自治体で、過去に極小指定された道路がない』とのコメントでした。
『制度が利用されていて指定されていない』ことと、『指定制度そのものが活用されていない』ことでは大きくその内容が違います。
ひょっとするとまだ望みがあるかも?と思いました。
初めて?極小指定された道路
その後、私は写真を持参したり、通行状況のデータを持ち込んだりを、道路を所管する自治体と交渉を続けました。
担当者が大変良い方で、こちらの事情や現場の実情をよく理解してくれたことが大きいのですが、その結果、この道路(の一部区間)が極小指定されることになりました。
市街区域外で極小指定されるということは、車道の幅(今回は3.2m)を超えない車両であれば、その道路と接する車庫に出入りできる、ということです。
最後に
今回のクライアントの所有する車両で一番大きなサイズは、幅2.1mの増トン車でした。
これが、2.49mのフルサイズであったり、それ以上の車幅になる特車であった場合には、少し話が違っていたかもしれません。
【関連記事】
貸切バス、トラックの車庫を借りるときの注意点
私もこの申請では仲間にアドバイスをもらって交渉を進めたのですが、このアドバイスがなければ最初からあきらめてしまっていたかもしれません。
行政書士仲間のアドバイスと、熱心な自治体担当者という幸運に恵まれての経験でした。
もしも、新たに設置したい車庫の前面道路が極端に狭い場合、『極小指定道路』という可能性があることを覚えておいてください。