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企業送迎や学校送迎に便利な特定旅客(特定バス)申請の注意点

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実務全般について

特定旅客とは?

旅客自動車運送事業を法令の考え方で分けると、一般旅客自動車運送事業と特定旅客自動車運送事業に区別されます。
この特定旅客自動車運送事業を簡単に説明すると、倉庫や工場などへの従業員さんの送迎や、学校の登下校時に活躍する送迎バスを運行する事業形態のことで、通称『特定バス』と呼ばれます。

特定バスはやっぱり特定だった・・・
一般旅客自動車運送事業は、いわゆる路線バスに代表される『一般乗合』、タクシーやハイヤーの許可である『一般乗用』、そして観光バス事業やロケバス事業のための『一般貸切』に分かれています。
 
一般旅客と特定旅客の大きな違いは、お客様が決まっている(特定されている)か、決まっていないかです。
特定旅客の場合は、お客様(運送需要者といいます)を決めて(固定して)から申請する必要があります。

例1:旅客は、○○化学株式会社 ○○工場の従業員、同工場への来訪者に限る。
例2:旅客は、学校法人××学園の生徒、教職員に限る。

一般旅客運送と比較すると?

一般旅客自動車運送事業では、お客様を特に決める必要がありません。
しかし、特定旅客では、上記のようにお客様を固定する必要があります。

では、それ以外に一般旅客自動車運送事業と違いはあるのでしょうか?

いろいろな違いがある・・・
▶申請に必要なバスの台数
一般乗合や一般乗用、一般貸切では、許可の申請に際して、最低必要な台数というのが決められています。
一般乗用では、地域によりますが、5台~10台以上、一般貸切も大型バスの配置によって3台~5台以上が必要になります。

一方で、特定旅客の場合は、1台からでも運行が可能です。
実際には、予備車がないと不安でしかたありませんが、審査基準上は1台で大丈夫です。
この参入障壁の低さが特定旅客最大の特徴です。
一方で、参入障壁が低いがゆえに、過度な価格競争になりやすいことにも、あらかじめ留意しておく必要があります。

▶運行管理
運行管理者1名、整備管理者1名、乗務員1名が必要です。
※定員11名以上の場合

運行管理者と整備管理者の兼任はできますが、乗務員の兼任はできません。
↑完全に一人で営業するという意味。自己点呼(チェック)になりますからね。

▶資金要件
一般旅客自動車運送事業のように、許可申請の際に『資金要件』を審査されることはありません。
これから事業を始めようとする経営者にとっては、この点が最大のメリットかも?しれません。

▶役員法令試験
ありません。これも大きいですね。

特定旅客はクリームスキミングに注意!!

もしも、あなたの会社が、知り合いの学校関係者から、最寄り駅と学校の間の送迎業務を依頼されたとします。
1年で250日くらいは稼働しますし、経営的には安定した比較的安心して参入できる業務です。

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もしもこのような依頼があった場合、バスを購入したり車庫を借りたりする前に、注意しなければならないことがあります。
それは、クリームスキミングの問題です。

▶クリームスキミング
クリームスキミングとは、地域交通やインフラなどの公共性の高い分野で、事業者が収益性の高い地域や顧客のみにサービスの提供を行って、他を切り捨ててしまうような行為のことを言います。
いわゆる『いいとこ取り』です。

例えば、公共性の高い路線バスなどで、駅から主要な住宅地や商業施設に向かう収益性の高いルートだけを残して、駅から山間部などにむかう赤字路線を切り捨てるような行為を言います。
一方で、新規参入する事業者が、既存業者にとって大切な収益性の高いルート(だけ)に送迎バスを走らせるような行為も、上記と同様に『クリームスキミング』として扱われることがあります。
上記の例で、駅から学校までの間を既存の路線バスが運行しており、現在生徒たちがそのバスを利用して通学しているような場合には、高い確率で許可申請に条件が付されることになります。

そもそも、乗合バスは、公共交通会議という機関での話し合いの末に設置されている公共交通機関ですから、儲からないからと言って簡単に廃止することができません。
そのため、ある程度は保護される必要があるわけです。

▶クリームスキミングの可能性がある場合の条件
審査する運輸局の担当者が、あなたの申請した特定旅客の新規申請が、『クリームスキミングにあたる』、と判断した場合、以下のような条件が付けられます。

① 既存のバス(路線であることが多い)会社の承諾を取り付ける。
② ルートを変更する。
※こちらはかなり難しい。わざわざ遠回りするルートを作っても仕方がない。
② できなければ、申請を取り下げる。

あなたの申請によって被害を受けるのは、既存のバス会社ですので、その会社が承諾するのであれば、特に文句を言う筋合いにはない、ということです。

ただ、上記の説明には、一つ例外があります。

▶クリームスキミングの例外
先ほどの例で、最寄りの駅から学校まで、すでに別の特定バスが運行しており、その会社をあなたの会社に替えるというのであれば、既存事業者を新たに害することがありませんから、既存事業者の承諾は不要になります。

遠足や旅行には使えない?

前述したように、特定バスは、運送需要者(お客様)専用のバスになります。
固定のお客様専用のバスで、毎日同じお客様を乗せて運行する(ルートも決まっています)ので、審査も監査も少し甘い設定になっているのです。
※一般旅客と比較して危険性が高くない、と判断できるからです。

いろいろメリットもある特定バスですが、制限も多いですね。
また、新型コロナの影響で、経営的に安定する送迎業務への参入が増えており、価格競争が激化しているようです。

仕事欲しさで値段勝負になってしまい、安全コストの確保が損なわれてはいけません。
貸切バスの年間契約の利用なども考えて、特定バスのメリットデメリットを冷静に検討してみる必要がありそうです。
 

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