お問い合わせ 0120-359-555

【旅客】【貨物】かっこいい運輸安全マネジメントの作り方

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

その他

貸切バス事業者安全性評価認定制度の申請期限を間近かに控え、運輸安全マネジメントに頭を悩ます方も多いのではないでしょうか?
 
今回は、運輸安全マネジメントの見せ方、つまり、どうやれば男前ないしは別嬪なシステムが出来上がるかを、簡単に説明します。

Pは目標だから何でもあり?(P①~P④)

運輸安全マネジメントにおいての目標には、大きく分けて3つあります。
仕事がら、いろいろな運輸安全マネジメントを見ていますが、この3つの目標の役割、プラス、それぞれの関係性を理解していない事業者さんが少なくありません。
 
多くの事業者の運輸安全マネジメントが締まりのない形に終始するのは、この3つの目標の立て方がおかしいからです。

安全に関する基本方針(P①・P②)
この項目は、目標というよりも理念と言った方がいいでしょう。
理念は毎年コロコロ変更するものではありませんから、一度決めたらしばらくは変えずに利用します。
逆に言うと、毎年変えずに済むような内容にまとめるのが普通です。
 
『安全が最も大事』『法令等を遵守』『安全管理体制の継続的な改善』は必ず入れるようにします。
 
安全目標(P③)
こちらは基本方針と違って、毎年コロコロ変えるべきものです。
勇気をもって、いろいろな目標にチャレンジしましょう。
事故ゼロや違反ゼロだけに限らず、中長期的な目標を数年単位で掲げるのも見栄えをよくする手法です。
 
具体的な施策(P④)
上で立案した安全目標を達成するために、具体的に何をするか、つまり施策について立案します。

 

目標を立てる上で大切なことは、安全方針、安全目標、具体的な施策(安全計画)の関係性を理解することです。

安全方針は、社是(理念)のようなものですから、ある程度不変的なものです。
安全目標は、上で定めた安全方針を達成するための具体的な(年次)目標です。
だから、毎年変更するわけです。
3つ目の具体的な施策(安全計画)は、上の安全目標を実現するためのより具体的な『予定』『予算』となります。

 
よくある間違いとしては、こんなものがあります。

安全方針
・わが社は安全を最優先します。
・わが社は法令等を遵守します。
・わが社は安全管理体制の継続的な改善に努めます。
・わが社は乗務員の教育を欠かさず行います。
ここまでは大丈夫。これで問題ありません。
 
安全目標
・乗務員の意識を高め、安全の大切さを最優先に考える。
・他社の事故の教訓を生かし、社内の教育活動に生かす。
・安全に関する投資を積極的におこない、安全管理体制の継続的な改善をする。
・輸送の安全を保つための連絡体制を確立する。
※ん??安全方針と何が違うの?
 
安全計画
・事故をゼロにする。
・速度違反をゼロにする。
・薬物とアルコールの危険を乗務員に教える。
※あれ?このためには何をすればいいの?
 
どこが悪いかわかりますか?
考えてみましょう。

 
安全目標はより具体的に!
具体的な施策(安全計画)は、もっともっと具体的な表現で!!

安全目標
飲酒運転の撲滅!!
 
具体的な施策
1.飲酒や薬物が運転に与える影響についての乗務員教育を実施
2.アルコールチェッカーを新しいものに買い替える
 
このような感じです。

 

セーフティのP④での添付資料例で『安全計画がわかる資料(年間教育計画表等)』と書かれているので、軒並み各社が教育記録をベタベタ添付していますが、ここは具体的に施策をしっかり示した方が、本来の趣旨に合っています。
 
もしも私なら、運輸安全マネジメント公表事項の中でいうところの輸送の安全のために講じようとする施策をしっかりアピールします。

 

Dは実際にやったことを記載する(D⑤~D⑦-2)

一番見せるのが難しいところです。
なぜなら、実際にやっていなければ、スカスカに見えてしまう部分だからです。

逆に言うと、D⑤からD⑦-2にボリュームのある会社さんは、しっかり行動できたのだということがわかります。
 
PDCAシステムの中で、Dは最も事業規模が出にくいところです。
大きい会社でも小さい会社でも、立てた目標を達成するためにやるべきことは、あまり変わらないからです。
 
事実、セーフティの書類でもD⑤からD⑦-2には、あまり中小と準大規模・大規模の要求事項に差がありません。
今後、見栄えのいい(実効性の高い)安マネを目指すのであれば、まず、Dの部分を充実させることを考えるべきです。

 

マネジメントシステムがわかってくればCが良くなる(C⑧)

計画を立てて行動するだけなら、誰にでもできます。
大切なのは、計画からの行動のあと、それを振り返ることです。

Cに要求されているイベントは日本語で『監査』と呼ばれています。
この文字面が良くないのか、Cを苦手にされている事業者さんが大変多いです。
 
そんな事業者さんに最も多いミスが、Cとこの後お話しするAの区別がごっちゃになっているもの。
Cは『チェック』だと覚えていますから、なんだか反省、反省、また反省されているような書類が目立ちます。

 

Cを有効に行うためには、まず監査員を選任するところから始めます。
会社の会計だって、監査が一番大切でしょ?
 
社長や安統官、統括運行管理者にだって文句の言える人、それが監査員です。
社長・安統官・運輸部門・整備部門・総務部門、最低これだけは、監査チェックシートを作成して、最低年1回は監査するようにしましょう。
 
監査って、どうやってやるかわからない?
ご心配なく。
当社のメンバーさんであれば、監査チェックシートのテンプレートもダウンロードできます。
 
最後に、監査員を監査することも忘れずに。
もちろん、監査員を監査するのは、監査員以外の方(安統官とか運行管理者)です。
ここで自己監査(自分で自分を調べること)をやっちゃうと、一発でシロートであることがばれてしまいます。

 

 

Aを見ればトップが仕事をしているかどうかわかる(A⑨-1~A⑨-2)

AはActとかActionと言いますが、私的にはAdjustだと思っています。
反省点を踏まえて、調整をかけて、新しい目標につないでいく。

照準(スコープ)付きの銃で、100m離れたビール瓶を狙うときを考えてみてください。
Pで、狙う場所を決める。
Dで、実際に撃つ。
Cで、なぜ外れたのか反省する。
Aで、照準(スコープ)を再調整(Adjust)してもう一回狙いを定める(Pに戻る)

 

Adjust(微調整)するためには、input(情報入力)が必要です。
・なぜ外れたのか。
・左右上下のどちらに外れたのか。
・改善する方法はあるのか・・・・
 
たくさんのインプットがあって初めて、反省して調整することができるわけですね。
 
次に行うのは、output(指示・目標の出力)です。
・外れた原因を解決する。
・先ほどは右に外れたので、今度は少し左を狙う。
・弾を変えれば、もっと精度が高くなるかも・・・

 

最初にボトムアップでinputを行い、その後トップダウンでoutputを行う会議。
これが、マネジメントシステムでいうところの代表者による見直し会議、通称マネジメントレビューです。
 
セーフティにおけるA⑨‐1、2には、事故に関する検討会議の議事録と、マネジメントレビューを付けておけば十分です。
逆言えば、それくらい濃い内容のマネジメントレビューでなければ、意味がないと言えます。

 

Cで行った監査の報告書と、マネジメントレビューの内容は、密接に関連付いていなければなりません。
なぜなら、C(チェック=反省)の結果を受けて調整するのがマネジメントレビューだからです。
 
マネジメントシステムのしくみがわかっていない事業者さんの多くは、監査とマネジメントレビューの関係が全く分かっておらず、内容がまったく同じようになってしまったり、全然違う内容の文書が二つ出来あがったりしています。
 
私たちのような、マネジメントシステムの専門家は、この『監査からマネジメントレビューにつながる流れ』をしっかりとチェックして、その会社の習熟度を測っているのです。

 
いかがでしたか?
マネジメントシステムの流れが、少しご理解いただけましたでしょうか?
 
セーフティの運輸安全マネジメントでは、記載されている『添付資料例』が親切すぎて、それに引きずられる担当者さんが多いように思います。
せっかく、自社の運輸安全マネジメントを作成したのですから、自信をもって、自分が正しいと思う『添付資料』を付けるようにしてください。
 
大丈夫!
セーフティの審査員さんも、マネジメントシステムのプロです。
実効性のあるシステムであれば、きちんと評価してくれるはずです。

自信を持って進めましょう!!
 

【中小企業診断士/行政書士 高原伸彰】