前回は『運賃の中抜き』の、特に現地で待機する場合について考えました。
今回は、同じ『中抜き』でも、車庫に戻ってくる場合について考えてみます。
企業送迎を例にとる
企業送迎の業務を考えてみます。
朝、8時に車庫を出発して、最寄りの駅とお客様の工場との間を何度か往復するとします。
回送費用を安く抑えることができ、また臨時の対応をしやすいことがその理由です。
朝の送迎を終えたバスは、現地で待機するわけではなく、一度会社の車庫に戻ってくるケースが多数をしめます。
車庫に戻っている時間は無料?
朝の送迎を終えて午前11時にバスが戻ってきました。
次の午後2時からの送迎までは車庫に駐車することになります。
上記の例では、空き時間は3時間しかありませんが、この3時間は時間制運賃に含めないことが可能です。
もちろん、この時間は1時間でも大丈夫です。
上記の空き時間は1時間でも時間制運賃から除くことが可能ですが、乗務員さんの拘束時間からは除けません。
この点については今後新しい記事で解説いたします。
現地の待機と車庫での待ち時間は違う
前編では、横浜駅を出発したバスが、ディズニーランドで乗客を降ろして待機するケースを例に挙げました。
現地で車両が待機した場合、その時間を時間制運賃から除くには、最低でも4時間以上の空き時間が必要でした。
しかし、車庫で駐車しているなら1時間でもOK?
▶貸切バスの新たな運賃料金制度のQ&Aのダウンロード
このQ&AのQ17をご覧ください。
Q17:スクールバスで午前3時間、午後3時間で日中は車庫に戻る運行は、午前5時間、午後5時間で算出するのか、それとも午前4時間、午後4時間か。
答えは新たな運賃料金制度のQ&Aにある
この質問に対する答えを見ると、営業所の車庫に戻っている時間は時間制運賃がかからないことがわかります。
<時間制運賃の計算>
① 出庫前及び帰庫後の点呼・点検時間(以下、「点呼点検時間」という。)として1時間ずつ合計2時間と、登校及び下校時の走行時間(登校時及び下校時の運送の出庫から帰庫までの拘束時間をいい、回送時間を含む。)を累計した時間とを合算した時間に1時間当たりの運賃額を乗じた額とする。ただし、登校及び下校時の走行時間を累計した時間が3時間未満の場合は、走行時間を3時間とする。(以下、略)
最低走行時間にも注意が必要
時間制運賃について書かれているのは、上記の部分だけです。
つまり、車庫にいる時間については一切触れられていません。
仮に午前2時間、午後2時間の運行だとしてみましょう。
この場合、午前、午後ともに3時間に満たない運行ですが、これを3時間、3時間に修正することはできません。
午前2時間と午後2時間を合算して4時間になりますから、最低走行時間はクリアしています。
つまり、この例の場合は運行前後に点検点呼それぞれ1時間をプラスして、計6時間の運賃を請求することになります。
上記のような方法(午前と午後を合わせて1運行とみなす)をとらないこともできます。
【貸切バス】スクールバス(みたいな運行)の特例についてのまとめ
【貸切バス】スクールバス(みたいな運行)の特例についてのまとめ2
企業送迎にも応用可能
上記の計算方法は、スクールバスのような運行形態であれば、他のものにも応用することができます。
企業送迎はもちろんですが、部活で試合会場に送迎して試合中は帰庫するような場合も利用可能です。
<その他>
① (略)
② 児童生徒等の登下校時に運送され、かつ、登下校時の間に帰庫するというスクールバスの運送形態と本質的に同様の形態であれば本回答で示す計算方法を適用することができる。
(平成 26 年 10 月 30 日回答修正)
車庫で待機は時間制運賃の例外
今回の記事では、朝の送迎を終えて車庫に戻ってくるケースの説明で、『車庫に駐車』という表現を使いました。
本当は『車庫に待機』の方がわかりやすいのですが、現地での待機と、車庫での待機を明確に分ける意味でもあえて『車庫に駐車』にしました。
つまり、車庫に戻ってきた場合に時間制運賃が加算されないことが例外だと考えましょう。