企業送迎などで、午前中の仕事が終わったら車庫に戻り、午後同じ業務に携わるような業務があります。
この場合、車庫に一旦帰庫するので、運賃はお客様に有利にできるのですが、労働法の観点からはちょっと注意が必要です。
送迎バスと時間制運賃の関係
午前中に旅客を決まった場所の間で送り迎えをし、一旦車庫で待機した上で、午後にも同じような送迎を行う場合、このような業務はスクールバスと同等の運送形態と理解されています。
具体例で考えましょう
具体的な例で考えてみましょう。
【乗務員さんの条件】
▶自宅から車庫まで10分
【午前便】
▶午前6時出勤
▶午前6時20分車庫出発
▶松戸駅と工場の間を3往復
▶午前11時に車庫戻り
▶午後11時10分一時退社
※乗務員はこの後、午後の勤務まで自宅で自由時間を過ごすという設定です。
【午後便】
▶午後5時50分再出社
▶午後6時に車庫出発
▶松戸駅と工場の間を2往復
▶午後9時00分に車庫戻り
▶午後9時30分に退社
自宅に戻っている時間は休息期間?
この場合の時間制運賃は、午前5時間、午後3時間に点検点呼2時間をプラスして10時間×時間単価になります。
そして、乗務員さんは翌日の勤務までに8時間以上の休息期間がありますから、労働法的にも問題なさそうに見えます。
お風呂に入ることもできますし、アルコールを摂取しなければ、食事をすることもできます。
ここでこの記事をお読みいただいている皆さんにご質問です。
上記のような場合、乗務員さんはこの業務を土日を除く毎日続けることができるでしょうか?
拘束時間は何時間?
この問題のポイントが拘束時間であることはお分かりいただけると思います。
この乗務員さんの拘束時間を何時間と考えるかが、この問題を解くカギになります。
①この乗務員さんは午前11時20分から午後5時40分までの6時間20分を自宅でゆっくりと過ごしています。
②上記の待機時間は時間制運賃の対象になりません。
③勤務後の休息期間は8時間以上が確保されています。
基本8時間以上が休息期間の条件
実は、上記のような勤務体系の場合、この乗務員さんは週に2回までしか勤務することはできません。
なぜなら、この勤務体系の場合、乗務員の拘束時間は15時間以上と考えられるからです。
▶8時間以上(分割休息を除く)
では、拘束時間の制限はどうでしょう?
▶13時間を基本として16時間まで
▶15時間を超えていいのは、週に2回まで
私たちは拘束時間と休息期間のどちらかで生活している
この乗務員さんは、午前11時20分から午後5時40分まで自宅で待機していますが、その長さが8時間未満なので休息期間として認めることができません。
働く社会人にとっての1日は、拘束時間と休息期間の二つに分類されます。
その間に休憩があったり、仮眠があったりしても、拘束されていることに違いはありません。
休息期間として成立しない時間は、所属している組織(会社でも個人商店でも)に拘束されていると考えればいいのです。
どんなに自由な時間でも、改善基準告示でいうところの休息期間にあてはまらなければ、すべて拘束時間です。
つまり、上記の例の乗務員さんは午前6時から午後9時30分までの15時間30分拘束されていると考えていいわけです。
15時間を超える拘束時間となる勤務は週に2回まで、と定められていますから、この乗務員さんがどんなに楽な勤務だとよろこんでいても、週3回以上乗務するこはできません。
運賃の中抜きと混同しないようにしましょう
ちょっとややこしい話でしたが、いかがでしょうか?
乗務と乗務の間の空き時間を無料にする、いわゆる時間制運賃の中抜きと、乗務員の拘束時間の中抜きの違いをご説明いたしました。
なんとなく、ごっちゃになってしまうケースもあると思いますので、それぞれの原則をしっかりと思い出して引受書、指示書を作成するように心がけて下さい。