▶私は今57歳である。
昔ならとっくに死んでいるか、少なくとも社会からはお払い箱になっている年齢だ。
中学生のころ、40代半ばの父をみて、『ひっでえジジイだな。』と思ったが、いざ自分がなってみると、意外なくらいに元気であることに驚く。
今は80台になった父をみて、『充電されていないおもちゃのようだ』と思うが、意外に本人は元気なのかもしれない。
▶あと2年と少しで迎える60代。
シニアど真ん中。
老いた後の生活がスタートするときだ。
自分で会社をやっているから定年はないし、少なくとも『いろいろな文章を書く仕事』は一生続けるつもりだから、老後の時間の使い方を心配することはない。
しかし、暦を一周した後に、まだ同じような仕事だけをしているのでは、なんだかすごく面白くない。
▶子供の貧困問題が昔から気になっていた。
コロナの影響もあるのだろうが、ますます増加の一途をたどっているらしい。
国の行く末を決めるのは、これから大人になっていく子供たちだから、その大事な子供たちが貧困ゆえに勉強が疎かになったり、勉強以外の活動ができなかったりしたのでは困る。
世にいうジジイになったら、余生は『子供の支援』を生きがいにしていこうと決めていた。
『子供の支援』にもいろいろとあるが、私が憧れているのは、『子供食堂のオヤジ』だ。
▶寺子屋みたいなところに、学校帰りの子供たちが集まってきて、勉強をしたり遊んだりする。
たくさんご飯を食べるのも、子供の仕事のうちなので、そういう腹をすかせた子供に美味しい夕食を用意する。
『できるもんなら何でも作るよ。』
人気ドラマ『深夜食堂』の『小林薫』のようなセリフを言ってみたい。
▶若いころから腰の据わらない生活ばかりしていたので、一日中チャーハンを作り続けていたこともあるし、一晩中魚をさばく仕事を続けた時代もある。
そのおかげで、包丁は人並以上に使えるし、時間さえもらえれば一通りの料理もできる。
ただ、所詮素人仕事なので、三つも四つも一度にオーダーが入ったら、手際よく対応することがむずかしい。
将来、『子供食堂』において、『立派な小林薫』になるために、今から準備しておくことが必要だと考えた。
よし、料理修行をしよう。料理教室ではダメだ。ちゃんと仕事の中で勉強しよう。
修行場所の条件はこれだ。
『一気にたくさんの注文が入って、さらに注文がバラエティに富んでいること』
▶上記の条件を満たす職場として考えたのは『弁当屋さん』である。
思いついたらすぐに行動する、いや、してしまう。
有名な弁当チェーン『〇っと〇っと』に応募をして、WEB面接を受けた。
結論から言うと、落ちた。
理由は、『ひげ』だ。
初出勤までに『剃ることが条件』と言われたが、もう30年近くも付き合ってきたのだから、それはご勘弁いただきたい。
▶せっかく『子供の支援』という老後生活への第一歩を踏み出したのだから、ここで足踏みするわけにはいかない。
『深夜食堂』は人生の楽しみを教えてくれるが、『子供食堂』は勉強の楽しさを教える必要がある。
そんなわけで、とりあえず料理の勉強は後回しにし、『勉強を教えるための勉強』を始めることにした。
すぐに某支援団体の面接を受けた。
細かい話は一切できないが、採用していただいたので、今月から週に2日、1回2時間のペースで、数学を中心にした学習支援ボランティアを始めた。
数学だけは現役世代(高校生)にも教える力はあるだろう、と根拠不明の自信を持っていたが、意外に大変だ。
得意な微積などは問題ないが、現役時代もあまり好きではなかった数列やベクトルはちゃんとやり直しておかないとまずい。
▶学習支援ボランティアの仕事をしっかりとこなすために、数学は数検を、英語は英検を受ける準備を始めた。
数検は、さっそく2級の試験が来年1月半ばに迫る。
英検に至っては、たぶん3級か4級からのスタートになるだろう。
志村けんさんの『アイミーマー』がコダマする。
▶これでやっとスタート台に立った。
『小林薫』への道はまだまだ長いが、それでも全然進まないよりはいい。
お願いです。
最低時給(何なら無給)でいいので、週2日、夕方5時から10時くらいまで調理を手伝わせてくれるお店ありませんかね?