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今年も貸切バス事業者安全性評価認定制度の書類提出時期がやってきました。
毎年のことなのですが、この時期は書類のチェックに追われる毎日です。
そして、毎年この時期に感じるのが、『運輸安全マネジメントって定着していないなあ』という喪失感です。
マネジメントシステムは、適切に運用すれば、目的達成のために大きな効果を発揮します。
一方で、いい加減にやっていると、まず何の効果も上がらず、かえって邪魔になる、というかなり厄介なシロモノです。
繰り返しになりますが、この4月は多くの貸切バス事業者が運輸安全マネジメントに頭を悩ませた時期です。
ならば・・・この時期に、ちゃんと運輸安全マネジメントを学びなおしておきませんか?、というのが私のご提案です。
基礎の基礎から、わかりやすく運輸安全マネジメントを解説します。
これでわかってもらえないのであれば、私はこの仕事をやめちゃうぞ(笑)
そんな気持ちで数回に分けて解説したいと思います。
今回は、マネジメントシステムの説明の前に、そもそも論となる『なぜ事故は起こるのか?ヒューマンエラーとは何ものか』から解説したいと思います。
事故はヒューマンエラーによっておこる
私たちが一番恐れる交通事故は、そのほとんどがヒューマンエラーによって引き起こされます。
では、最初に、このヒューマンエラーについて知っておきましょう。
ヒューマンエラーとは、文字通り人間がやってしまう誤りのことです。
私たちがよく知るヒューマンエラーに、『うっかりミス』や『ポカ』があります。
これらのありがちなミスのことを狭義(きょうぎ)のヒューマンエラーと言います。

一方で、運転者がリスクのあることがわかっていながら意図的にマズい行為に及ぶことを不完全行動と言います。
一時停止を無視する、制限速度を無視するなどがこれにあたります。

ここで大切なことは、無意識にやったことも意識的(故意)にやったことも、どちらもヒューマンエラーであるということです。
まず、このポイントを覚えてください。
ヒューマンエラーについては、とても大切な認識なので、当社の2022年度の教育プログラムにも組み込みました。
5月の運行管理者教育と6月の乗務員教育の両方で取り上げる予定になっています。
スイスチーズモデルやハインリッヒの法則など、有名な考え方を使って、わかりやすく説明しています。
ヒューマンエラーの防ぎ方
ここでは、ヒューマンエラーの防ぎ方を知っておきましょう。
うっかりミスやぽかミスなど、狭義のヒューマンエラーと、意図的なエラーである不完全行動では、防ぎ方に違いがあります。
✔狭義のヒューマンエラーの防ぎ方
狭義のヒューマンエラーは、加齢や性格など、生物としての機能不全が原因となっています。
それを防止するには、システム(設備や手順など)を工夫してカバーすることになります。
代表的な考え方に、フールプルーフとフェールセーフがあります。
【フールプルーフ】
ギアが入っているとセルモーターが回らない。

【フェールセーフ】
踏切が停電すると、遮断機は下りたままになる。
※遮断機を上げるのに電気が必要な設計になっている。
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✔不完全行動の防ぎ方
やってはいけない行動をわざととってしまうということなので、運転者のモラルが欠如している状態です。
このような状態を防止するためには、社内に安全を尊重する文化を根付かせるしかありません。
【不完全行動発生の根は深い】
①知らない
そもそも、その行動が危険かどうかを知らないケースです。
ヒヤリハット映像での教育などが有効でしょう。

②できない
運転技術が低いことも、ヒューマンエラーの一つです。
技術訓練などが有効です。
③やらない
危険であることの認識はあるのに、やらないケースです。
点検のサボタージュや、指差し点呼の省略などがあります。
もっとも矯正がむずかしいタイプです。
いかがでしたか?
①ヒューマンエラーには2種類あること
②それぞれに対策方法が違うこと
この点について、今日は覚えてください。
運輸安全マネジメントは、この二つのヒューマンエラーを防止するために継続的に回していくものなのです。
安全目標も重点施策も、どちらかのヒューマンエラーの解消のために立案するのです。
この理解なしに、いきなり『PDCAのお念仏』から始めてしまうと、よく見かける『身がない』、『名前だけ』の安マネが出来上がってしまいます。
次回からは、本格的に運輸安全マネジメントを有効活用するための14のガイドラインについて勉強します。