この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。
前回に引き続いて、貸切バス事業者安全性評価認定のお話です。
セーフティは書類を確認して審査する
セーフティバスは、貸切バスの安全性を客観的に評価するためのものです。
『客観的に評価』というのは、『第三者に評価の理由を説明できる方法で採点する』ということですから、評価のためのエビデンス(証拠)が必要になります。
日報であったり、運送引受書であったり、点呼簿であったり。
それらの書類を確認し、点数化した上で評価するわけです。
『きれいなものを選んで用意』は無理
セーフティバスの審査では、日常業務で見慣れた、いろいろな書類の提出が求められます。
例えば、タコグラフのチャート紙(デジタコの場合はデータ表)や整備点検記録簿など、その種類は多岐にわたります。
それらの書類の内容を精査して、審査される事業者が『適切な管理のもので経営』していたかどうかを判断するわけです。
一つ一つの書類がしっかりしていればいいのですから、ちゃんと書かれているモノだけを引っ張り出して選べばいいのでしょうか?
いいえ・・・セーフティはそんなに甘くありません。
ですから、『運行指示書はこれが書けてるな』 『タコチャートはこれがきれい♪』『乗務員台帳でちゃんと書かれているのはこれだけか』なんていう選び方はできません。
参考までに、その関連性の一部を簡単に書いておきます。
1-③ 最繁忙期の宿泊を伴う任意の一運行
3-⑦ 1-③で設定した日の点呼記録簿
3-⑧ 3-⑦で添付した点呼記録簿上で勤務時間が最も長い乗務員の日報
3-⑨ 3-⑧で設定した日報に対応するタコグラフ
3-⑩ 同じ日報に対応する運行指示書
3-⑫ 同じ日報に対応する運送申込書
3-⑬ 同じ日報に対応する運送引受書
4-⑤ 3-⑨のタコグラフの車両における点検記録簿
★★が悩ましい・・・
前の記事でも書きましたが、貸切バス事業者安全性評価認定の取得そのものはそれほど大変ではありません。
むしろ維持することの方が大変で、★を何年も維持している会社さんは本当に大変だろうと思いますし、その経営姿勢に頭が下がります。
★の基準点は60点以上ですが、初回に80点を取っても星は★からスタートします。
2.★の事業者が更新で80点以上を取得すると、★★にグレードアップします。
3.★★の事業者は大変です。
次の更新で80点以上を取得すると★★★になりますが、60点以上80点未満だと★に逆戻りです。
あくまでも個人的な意見ですが、★★での更新については評価方法を変えた方がいいのではないか?と思っています。
★★は1シーズンしか安住していられない地位で、次の更新では必ず★か★★★になってしまいます。
当社のサポート先でも、その話題は多く、★から★★への挑戦意欲がない事業者さんが増えています。
貸切バス事業者がどんなに頑張っていても、タイミング次第で軽微な行政処分を受ける可能性は十分にあります。
たとえば、車両1台のチャート紙の故障に気づかなかっただけで行政処分30日車が来ます。
(個人的にはやりすぎだと思っています。)
すると、行政処分の持ち点が3点減りますから、前回82点で★★になった事業者は今回も同じ点数だと『いとも簡単に』★に戻ってしまうわけです。
私たち関係者は★★が★になっても、その事業者の安全性が大きく損なわれたとは思いません。
しかし、一般のユーザーはどうでしょう?
『あの会社、★★が★になっちゃったけど、大きな事故でも起こしたんじゃない??』
そんないわれもない疑惑を生むくらいなら、『★のままならシールの貼替もホームページの改修もいらないし、無理せずに★をずっと維持していた方がマシ』、と思うのは、経営者側の判断として至極当然、極めて理性的な判断と言えます。
一般のユーザーは、バス会社がセーフティを取得しているかどうかは気にしますが、★だろうが★★★だろうが星さえついていればいいと考える人が多いことも、この判断を後押ししています。
★だけならむずかしくはない
何度も書きますが、セーフティはむずかしくありません。
むしろ、取れない方が問題です。
大きな行政処分を受けたような場合は仕方ありませんが、減点のない会社はもう少し意欲をもってチャレンジして欲しいと思います。
法令順守の点数が20点。
安全性に関する取り組みの『基準点』で10点。
事故や行政処分がなければ20点。
これだけでもう50点です。
これに運輸安全マネジメント20点のうち半分の10点が取れれば、見事★合格です。
ね?それほど高いハードルではないでしょう?
取るのはそうむずかしくないんです。
何度も言いますが、維持するのが大変なんです。
BCPは単なる成果物のこと
来期の運輸安全マネジメントについて、サポート先の皆さまと汗をかいています。
特に来年度からは、運輸安全マネメントにBCPを加えた『安マネplusBCP』という試みを開始しています。
来年のTokyo2020に備える意味でも、できるだけ実効性の高いマネジメントシステムを構築してまいりましょう。
BCPと言うのは、あくまでも事業継続のための計画(成果物)で、継続性のあるシステムの呼び名ではありません。
運輸安全や事業継続などという大きな目標は、マネジメントシステムでしっかりと継続的に管理していく必要があり、どこかの自治体のように『ポン付け』で作成するものではありません。
※きっかけ作りとしてはとてもいいので、否定しているわけではありません。
当社の『安マネplusBCP』について、現在6社が新しい取り組みとして参加を表明いただいております。
参加して下さる貸切バス事業者様の社名も含め、新しいウェブサイトでその取り組み(悶絶?)をご紹介してまいりたいと考えております。
どうぞよろしくお願いいたします。