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目次
経審の有効期限が延長されます
経営事項審査(以下、経審)の有効期限について、特例措置がでました。
今回はこの件について、簡単に分かりやすく説明したいと思います。
公のお金を有効に使うためのシステム
経審とは、簡単にいうと入札参加のための条件審査のことです。
公共工事を発注者から直接請け負うためには、欠かせない手順です。
一般の会社が、自分の会社の本社社屋を新築するのに使うお金は、その会社のサイフから支出されます。
このお金の使い道に関して文句を言う人はいません。
※いるかもしれませんが、私たちには関係ありません。
しかし、公共工事には『公のお金』が使われますから、できるだけ有意義な使い方をされる必要があります。
工事においてお金を有意義に使うとは、適切な建設事業者が適切な手段によって工事を実行するということです。
経審は、公共工事の入札に参加する建設事業者が適切であるかどうかをある程度客観的に評価するためのシステムです。
評価の方法をチェックしましょう
経審がどのような形で行われるのか、簡単にご説明します。
まず最初は、審査の方法です。
①経営規模
年間でどのくらいの工事をやっているか、という実績の規模に加えて、自己資本と営業利益の額のような経営資産の規模などを点数化します。
②経営状況
財務諸表から、建設事業者の経営内容を分析します。
私たち中小企業診断士が行う経営分析に似ていますが、建設業界ならではの視点もあって面白いものです。
経営状況の分析は、国交省が認めた登録機関に依頼することになっています。
③技術力
技術力をどうやって数値化するの、という話ですが、要するにどれだけの資格者が社内にいるか、ということです。
④社会性等
企業として、社会性のある活動をしているかどうかが審査されます。
法人としてマストな評価点数と、オプション的な加点があります。
経審のスケジュールは?
経審のスケジュールについて説明します。
今回の特例は、このスケジュールに関係しています。
つまり、決算期が終わらないと審査してもらうことができない、ということです。
11月決算のABC建設株式会社を例にあげて考えてみましょう。
①平成30年度の決算日は、令和1年11月30日になります。
②決算から2ヶ月後の、令和2年1月末までに、確定申告を行う必要があります。
③確定申告が終わったら、そこから2ヶ月以内に、建設業における決算報告書を提出します。
(令和2年3月末)
④決算報告書を提出するタイミングで、登録機関に経営状況分析を申請します。
⑤登録機関からの分析結果を添えて、行政に経営規模等評価の申請・総合評定値の請求を行います。
⑥行政から経営規模等評価通知書・総合評定値通知書が戻るのは、請求から約1ヶ月後です。
(令和2年4月末から5月)
経審の有効期限は1年7ヶ月
ABC建設さんの例でいうと、令和1年11月30日の決算によって得られた経審の評価(点数)が確定するのは、翌年の4月から5月にかけて、つまり決算から半年くらい経ってからです。
※決算報告書を『巻きで作る』などの努力次第で早くすることも可能です。
では、半年かかって獲得した評価(点数)はいつまで有効なのでしょうか?
つまり1年7ヶ月有効ということになります。
ただ、経審は一度受ければいいものではなく、公共工事の入札を継続するためには、毎年決算後に同じ手順で経審を受けなければなりません。
焦らなくてもいいけど、早めの対応を
今回国交省から発表された特例は、この1年7ヶ月の有効期間を延長するためのものです。
新型コロナ感染症の影響で、有価証券報告書等の提出期限の延長措置がとられました。
報告書等の提出期限延長は、企業の決算報告にも大きな影響を及ぼします。
①令和2年5月29日から令和3年1月31日までの間は、平成30年10月29日の直後の事業年度終了の日以降に経営事項審査を受けていれば入札に参加することができる。
令和1年10月31日に決算を迎えた事業者の経審の期限は、令和2年の5月末になるはずですが、有価証券報告書等の提出期限の延長措置などで、この5月に経審が終了しないことに配慮した措置です。
しかし、この措置も来年1月31日には消えてしまいますから、なるべく早く経審を終えるようにしましょう。
Click!⇒新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、 建設業における経営事項審査、特例を措置(国交省HP)